制御盤の図面やセンサのカタログには、「NPN」「PNP」という表記が繰り返し登場します。この意味を曖昧にしたまま配線すると、 「出力を ON にしたのにランプが点かない」「センサを交換したら PLC の入力が反応しなくなった」といったトラブルに直結します。 電気設計・制御設計の入り口で起きるつまずきの多くは、この PNP と NPN、言い換えればシンクとソースの向きの取り違えから始まります。
本記事は、PNP と NPN の違いを知りたい人のための解説です。はじめて学ぶ方にも、一度習ったけれど整理し直したい方にも使えるように、 トランジスタの内部構造の話よりも、制御配線で出力がどちら向きに電流を流すかを中心に説明します。 先に一言で説明すると、NPN は電流を 0V(GND)側へ吸い込み(シンク)、PNP は電流を +24V 側から押し出します(ソース)。 違いの核心はこの電流の向きです。 でも安心してください。このサイトでは視覚的にも学習できるよう図に力を入れています。 本記事の回路図はボタン操作で実際に電流が動くので、向きを目で確かめながら読み進められます。
先に動く図だけ触ってから文章に戻る読み方もできます。「PLC のトランジスタ出力を動く図で見る」へ移動すると、最初の動く図に着きます。
この記事でわかること
いま持っている疑問と、それに答える章の対応です。
| 疑問 | 該当章 |
|---|---|
| NPN/PNP、シンク/ソース、コモンという言葉の意味は? | §1 |
| PNP と NPN の違いを、ひとことで言うと? | §2 |
| 負荷はどちら側に置けばよいの? | §2 |
| PLC のトランジスタ出力では何が起きているの? | §3(動く図あり) |
| 現場では NPN と PNP のどちらを選ぶべき? | §4 |
| 近接センサの NPN/PNP はどう違うの? | §5(動く図あり) |
| センサと PLC 入力の組み合わせで失敗しやすい点は? | §6 |
| 短絡すると NPN と PNP で何が違うの? | §7(動く図あり) |
| 現場ではどう測って確かめればよいの? | §8/FAQ |
1. 用語を先にそろえる ── 同じ「NPN」でも部品の話と配線の話がある
NPN/PNP がわかりにくい最大の理由は、半導体部品としてのトランジスタの構造の話と、制御配線での出力形式の話が、 同じ「NPN」「PNP」という言葉で語られることです。教科書の「NPN トランジスタは N 型・P 型・N 型の接合で…」という説明と、 盤の「この出力ユニットは NPN タイプ」という言い方は、同じ単語でも指しているレイヤーが違います。 本記事で扱うのは後者、つまり制御回路の中で、出力が負荷をどちら向きに駆動するかです。
まず、この記事で使う言葉を整理します。ここですぐに覚えきれなくても大丈夫です。あとの動く図で、同じ言葉に何度も戻ってきます。
| 言葉 | この記事での意味 | ひとことで |
|---|---|---|
| NPN(出力) | ON のとき、負荷の先を 0V(GND)側へ落とす出力 | シンク=流れ込み |
| PNP(出力) | ON のとき、負荷へ +24V 側の電圧を出す出力 | ソース=押し出し |
| シンク/ソース | 電流の向きを現場の言葉で言い分けたもの | 出力の文脈では NPN≒シンク、PNP≒ソース |
| オープンコレクタ | 出力トランジスタのコレクタをそのまま端子に出した構成 | センサ出力でよく見かける形 |
| コモン | 複数の入出力で共通にまとめる電源側の端子(+コモン/−コモン) | 相手機器の「寄せ方」 |
覚え方のコツは、N と P のアルファベットを暗記することではなく、機器の端子から見て、電流が流れ込むのか、押し出されるのかという向きとセットで覚えることです。 シンクは「流れ込み」、ソースは「押し出し」。この 2 語だけ手元に置いて、次の章へ進んでください。
「NPN は危険」「PNP なら安全」のような印象だけで機器を選ぶと失敗します。大事なのはつながる相手の入力仕様と、異常時に何が起きやすいかの 2 点です。この 2 点はそれぞれ §4 と §7 で扱います。
2. 全体像をつかむ ── 違いは「スイッチが電源のどちら側に入るか」
機器を ON/OFF する出力回路には、必ず内部にスイッチの役割をする素子があります。NPN と PNP で違うのは、 そのスイッチが電源の 0V 側に入るか、+24V 側に入るかです。スイッチの置き場所が変わると、負荷の置き場所と電流の向きも決まります。
| NPN(シンク) | PNP(ソース) | |
|---|---|---|
| スイッチが入る側 | 0V(GND)側 | +24V 側 |
| 負荷の典型的な置き方 | +24V → 負荷 → 出力端子 → 0V | 出力端子 → 負荷 → 0V |
| ON のときの電流の向き | 負荷側から出力端子へ流れ込む | 出力端子から負荷側へ押し出す |
| ON のときの出力端子の電圧 | 0V 近くまで下がる | +24V 近くまで上がる |
| OFF のときの出力端子の電圧(目安) | 負荷を通して電源側の電圧に近づくことが多い | 0V 側に近づくことが多い |
NPN では、負荷は +24V 側にぶら下がっていて、出力が ON になると回路の下端が 0V へ落ち、電流が負荷を通って出力端子へ流れ込みます。 PNP では、負荷は 0V 側に置かれていて、出力が ON になると +24V が押し出され、電流が出力端子から負荷を通って 0V へ抜けます。 同じ「ON」という操作でも、端子の電圧が下がるのが NPN、上がるのが PNP です。この対称性が、後でテスタ測定の話につながります。
迷子になったら、この章の表の「ON のときの電流の向き」の行だけ見直してください。以降のすべての図は、この 1 行を目で確かめるために作られています。
3. PLC のトランジスタ出力を動く図で見る
PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)のトランジスタ出力ユニットは、大きく NPN(シンク)タイプと PNP(ソース)タイプに分かれます。 リレー接点出力と違って半導体スイッチなので高速で長寿命ですが、電流を流せる向きが固定されています。 向きを取り違えると、故障していなくても負荷は動きません。
ここからの図は、プログラム上の出力接点(ソフトY0/ソフトY1)を 2 チャネル分用意し、PLC の出力が外部のリレーを駆動する様子を再現しています。 図の中の「確認ランプ」は、出力ユニットの表示灯や現場の表示灯に相当します。 図の見方として、緑がかった線は正電圧、灰色は 0V 付近、線の上を動く粒は電流の向きと速さを表します。
3-1. NPN(シンク)出力 ── 電流は外部から PLC へ流れ込む
下の図で「ソフトY0」を ON にすると、出力トランジスタが導通し、Y00 端子が 0V 側へ落ちます。 すると +24V → 外部リレー → Y00 端子 → PLC 内部 → 0V という経路が閉じて、リレーと確認ランプに電流が流れます。 外部の負荷側から PLC の端子へ電流が流れ込むので、シンク(吸い込み)と呼ばれます。
シミュレータ読込中…
ch1(ソフトY0)
C1 = —ch2(ソフトY1)
C2 = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
ch1 と ch2 を別々に操作してみてください。出力ユニットの中では、チャネルごとに独立したスイッチ(トランジスタ)が並んでいることが体感できます。 ON にしたチャネルだけ端子電圧(C1/C2)が 0V 近くまで下がり、そのチャネルのリレーだけが通電します。
NPN 出力をテスタで見るときは、出力端子と 0V の間の電圧を測ります。ON で 0V 近くまで下がり、OFF で高い電圧に戻る ── この動きが確認できれば、出力素子は正しく働いています。
3-2. PNP(ソース)出力 ── 電流は PLC から外部へ押し出される
今度は同じ 2 チャネル構成の PNP 版です。「ソフトY0」を ON にすると、出力トランジスタが +24V 側で導通し、Y00 端子に +24V が現れます。 電流は PLC の端子から外部リレーへ押し出され、0V へ抜けていきます。これがソースです。
シミュレータ読込中…
ch1(ソフトY0)
C1 = —ch2(ソフトY1)
C2 = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
NPN の図と見比べると、同じ「ON」でも端子電圧の意味が正反対だとわかります。 NPN では ON のとき C1 が 0V 近くへ下がり、PNP では ON のとき C1 が +24V 近くへ上がります。 どちらもリレーは同じように通電するので、電圧の数字だけを見ても、負荷が動いているかどうかは判断できません。 数字は必ず「この出力はシンクか、ソースか」という向きの情報とセットで読みます。
「電圧が出ているから動いているはず」という思い込みは、NPN 出力で特に危険です。NPN では OFF のときのほうが端子電圧は高く見えます。テスタの読みを解釈する前に、出力形式がどちらかを必ず確認してください。
4. NPN と PNP はどう選ぶか ── 好みではなく相手のコモンに合わせる
「結局どちらを使えばよいのか」という問いに対する実務の答えは、接続する相手の入力仕様に合わせるです。 PLC の入力ユニットやリレー回路には、複数の信号を共通の電源側へまとめる「コモン」の取り方があり、 プラスコモンかマイナスコモンかによって、つながりやすい出力形式が決まります。
| 相手側のコモン | つながりやすい出力 | 現場での見え方 |
|---|---|---|
| プラスコモン(+を共通にする) | NPN(シンク)出力 | 入力の共通端子に +24V。信号線が 0V 側へ落ちると検知される |
| マイナスコモン(−を共通にする) | PNP(ソース)出力 | 入力の共通端子に 0V。信号線に +24V が来ると検知される |
この対応は傾向であって、機種によっては両対応の入力もあります。それでも設計の順序は変わりません。 新規の設備なら仕様書と接続先の機器仕様が先、既存設備への増設なら既存盤のコモンの寄せ方が最優先です。 個人の好みや過去の慣れで選ぶと、あとから追加するセンサや増設ユニットが合わずに手戻りになります。
また、メーカや地域・業種によって「この現場はほぼ NPN で統一されている」「この業界は PNP が標準」といった偏りが存在します。 偏りには理由(過去の規格・安全設計の考え方・調達のしやすさ)がありますが、絶対の法則ではありません。 目の前の案件では、慣習より接続する機器の仕様書を優先してください。
カタログで出力形式の文字表記だけを見て決めず、接続例の図まで確認してください。文字の「NPN/PNP」を読み違えても、接続例の図と本記事の動く図を見比べれば、電流の向きの食い違いに気づけます。
5. センサ出力の NPN と PNP も同じ「向き」で読める
近接センサや光電センサなど、3 線式センサの出力も NPN/PNP で呼び分けられます。 3 本の線のうち 2 本(+24V と 0V)で電源をもらい、残る 1 本の出力線を内部のトランジスタで ON/OFF する構成です。 役割は PLC 出力と違いますが、シンク/ソースという向きの考え方はまったく共通です。 PLC とセンサを別々の知識として暗記するのではなく、同じ「向き」の言葉で並べて理解するのが近道です。
5-1. NPN センサ ── 検知すると出力が 0V 側へ落ちる
下の図の「検知」ボタンは、ワーク(検出対象)がセンサに近づいた状態を再現します。 検知が ON になると内部の NPN トランジスタが導通し、出力線が 0V 側へ落ちて、+24V 側につながれたリレーコイルに電流が流れ込みます。 §3-1 の PLC 出力と同じ「流れ込み」の骨格です。
シミュレータ読込中…
検知
C = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
5-2. PNP センサ ── 検知すると出力に +24V が現れる
PNP センサでは、検知が ON になると内部の PNP トランジスタが +24V 側で導通し、出力線に +24V が現れます。 電流は出力線からリレーコイルを通って 0V へ押し出されます。§3-2 の PLC 出力と同じ「押し出し」の骨格です。
シミュレータ読込中…
検知
C = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
PLC 出力の 2 つの図とセンサの 2 つの図を往復すると、機器が変わっても「流れ込み」と「押し出し」という 2 つの型しかないことが見えてきます。 この型が見えていれば、初めて出会う機器のカタログでも、接続例の図を電流の向きで読めるようになります。
センサをテスタで確認するときは、測る前に「NPN なら検知で出力が下がる、PNP なら上がる」という仮説を立ててから当たると迷いません。センサ本体の検知ランプは点くのに PLC が反応しない場合は、センサ単体の故障よりも次章の組み合わせ問題を先に疑ってください。
6. センサと PLC 入力の組み合わせは相性を外すと動かない
単体では正常なセンサと、単体では正常な PLC を組み合わせたのに入力が入らない ── これは現場でとてもよくある失敗です。 原因の多くは故障ではなく、出力形式と入力コモンの相性が合っていないことにあります。 NPN センサはプラスコモンの入力へ、PNP センサはマイナスコモンの入力へつなぐのが基本形で、逆向きの組み合わせでは電流の通り道がそもそも成立しません。
この相性を電圧のレベルで理解する鍵が、プルアップ/プルダウンという考え方です。 オープンコレクタ出力は、トランジスタ単体では「信号線を片側の電位(NPN なら 0V、PNP なら +24V)へつなぐ」ことしかできません。 反対側の電位を作るのは、受け側に入っている抵抗 ── 信号線を +24V 側へ引き上げるプルアップ、0V 側へ引き下げるプルダウン ── の仕事です。 下の図では、NPN オープンコレクタ+プルアップと、PNP オープンコレクタ+プルダウンを並べています。
シミュレータ読込中…
NPN+プルアップ
信号1 = —PNP+プルダウン
信号2 = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
NPN 側は、OFF のあいだプルアップ抵抗が信号線を +24V(H)に保ち、ON にすると 0V(L)へ引き落とします。 PNP 側はその鏡像で、OFF のあいだプルダウン抵抗が 0V(L)に保ち、ON にすると +24V(H)が現れます。 もし受け側に適切な抵抗がなければ、OFF のときの信号線はどちらの電位にも確定せず、「つないだのに電圧がまったく変化しない」「ふらついて誤動作する」という症状になります。 プラスコモン入力の内部にはこのプルアップに相当する回路が、マイナスコモン入力にはプルダウンに相当する回路が入っている、と捉えると、§4 の相性の表とここがつながります。
組み合わせを確認するときのチェックリストです。上から順に見ると、原因のほとんどはどこかで見つかります。
- センサの出力形式(NPN か PNP か)を銘板とデータシートで確認する
- PLC 入力ユニットのコモンの寄せ方(+か−か)と定格を確認する
- メーカの接続例の図と、実際の配線が一致しているかを確認する
- 検知させたとき、信号線の電圧が期待した方向(下がる/上がる)へ動くかを測る
- PLC の入力表示(入力 LED やモニタ)が期待どおりに変化するかを見る
「なぜか動いたからこのままでいい」で終わらせると、あとで苦労します。漏れ電流や意図しない経路でたまたま動いているだけの配線は、ノイズ・温度・機器の交換をきっかけに不安定になります。動いたあとに、電流がどの経路をどちら向きに流れているかを一言で説明できるかを確認してください。
7. 短絡したときに起きることも NPN と PNP で違う
NPN と PNP の違いは、正常時の配線だけの話ではありません。配線の噛み込みや絶縁不良で出力線が 0V へ触れてしまう「地絡」が起きたとき、 何が起きやすいかが NPN と PNP で変わります。ここでは同じ場所に同じ地絡を起こして、両者の挙動を見比べます。 どちらが絶対に安全という話ではなく、傾向を知って保護設計と原因調査に生かすための比較です。
7-1. NPN 出力の地絡 ── 出力素子は無事でも、負荷が勝手に ON してしまう
下の図の「短絡」ボタンは、外部リレーと Y00 端子の間の配線が 0V へ地絡した状態を再現します。 ソフトY0 が OFF のまま短絡を発生させてみてください。PLC は何も出力していないのに、 +24V → 外部リレー → 地絡点 → 0V という経路が勝手に成立し、外部リレーが誤って通電します。 しかも電流は PLC 側へ入らずに地絡点へ抜けるため、確認ランプは消えたままです。 出力トランジスタにはほとんど電流が流れないので、素子そのものは壊れにくい傾向があります。
シミュレータ読込中…
操作
状態
C1 = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
この「素子は無事なのに論理がおかしい」という壊れ方は、原因調査を難しくします。 ヒューズは切れておらず、出力ユニットの自己診断も正常なのに、現場の機器だけが勝手に動く ── そんな症状を見たら、シンク側配線の地絡を候補に入れてください。
7-2. PNP 出力の地絡 ── 誤 ON はしにくいが、出力素子に過大電流が流れてしまう
同じ場所の地絡を PNP で起こします。ソフトY0 が OFF の間は、+24V を出す素子が閉じているので何も起きません。 つまり PNP は、この形の地絡では負荷の誤 ON が起きにくいタイプです。 問題は出力を ON にしたときです。ソフトY0 を ON にすると、出力素子から地絡点へ向かって、負荷を通らない電流が流れ続けます。 下の図では正常時の約 15 mA に対して、短絡中はおよそ 30 倍の電流が出力素子を通過します。実機では素子の破損や、保護回路の動作につながる状態です。
シミュレータ読込中…
操作
状態
C1 = —使用: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp ほか・GPL)· falstad.com/circuit
2 つのデモをまとめると、次のような傾向の違いになります。
| 出力線が 0V へ地絡したとき | NPN(シンク) | PNP(ソース) |
|---|---|---|
| 負荷の誤 ON | 起きやすい(出力 OFF でも負荷が通電してしまう) | 起きにくい(出力 OFF なら電流の供給元がない) |
| 出力素子への負担 | 小さい傾向(短絡電流が素子を通らない) | 大きい傾向(ON にした瞬間から過大電流が素子を通る) |
| 現場で見える症状 | ヒューズも素子も無事なのに機器が勝手に動く | チャネル単位で出力が死ぬ、保護動作で止まる |
| 設計で意識すること | 誤 ON してはいけない負荷のフェイルセーフ | 短絡保護の有無、配線の物理保護、定格の余裕 |
海外で PNP(ソース)が好まれる背景には、この地絡時の挙動の違いがあります。 制御回路の 0V 側を接地しておき、+24V 側だけをスイッチする構成にすると、地絡は「機械が勝手に動く」ではなく「保護が働いて止まる」という安全側の症状として現れます。 機械の電気装置に関する規格(IEC 60204-1 など)にも、地絡で意図しない動作が起きないように制御回路の片側を接地して反対側をスイッチする、という同じ考え方が示されています。 ただし、フェイルセーフな回路は NPN でも設計できますし、短絡保護を内蔵した出力素子も普及しています。 形式の暗記よりも、「この配線が地絡したら何が起きるか」を設計のたびに一度考えることのほうが役に立ちます。
この短絡デモは学習用の簡略モデルです。実際の機器では保護回路・ヒューズ・配線抵抗によって挙動が変わります。動作確認のためでも、実機の盤で故意に短絡させることは絶対にしないでください。安全に関する仕様は必ずメーカの資料に従ってください。
8. 現場での確認手順 ── 図で見た向きをテスタで確かめる
動く図で向きの感覚をつかんだら、現場での測定手順に置き換えます。出力が動かないときは、次の順番で確認すると効率的です。
- 給電の確認 ── +24V と 0V が来ているかを最初に測る。電源が来ていなければ、この先の測定に意味がない
- コモンの確認 ── コモン端子の寄せ方(+か−か)が図面どおりかを見る
- OFF 時の基準を取る ── 出力 OFF の状態で出力端子の電圧を測り、「ここから動く方向」の基準にする
- ON で方向を見る ── 出力を ON(または検知)にして、電圧が期待した方向へ動くかを見る。NPN なら下がる、PNP なら上がる
- 負荷の追従を見る ── リレー・表示灯・入力 LED が電圧の変化に追従しているかを確認する
- 隣のチャネルと比べる ── 正常なチャネルと同じ測り方をして、差があるかを見る
「点かない」トラブルの原因は、経験的に、プログラム側の出力が OFF のまま・コモン線の外れ・負荷の断線・出力形式の取り違え、の順に多く見つかります。回路の奥を疑う前に、給電とコモンから確かめると時間を節約できます。
まとめ ── PNP と NPN は「向き」で整理できる
- NPN はシンク(流れ込み)。ON のとき出力端子が 0V 側へ落ち、電流は負荷から端子へ流れ込む。
- PNP はソース(押し出し)。ON のとき出力端子に +24V が現れ、電流は端子から負荷へ押し出される。
- 違いの本質は、スイッチが電源のどちら側に入るか。アルファベットの暗記より向きで覚える。
- PLC 出力もセンサ出力も、同じ「シンク/ソース」の言葉で読める。
- 選定は好みではなく、相手のコモンと入力仕様に合わせる。増設なら既存盤が最優先。
- テスタでは電圧の大小ではなく、ON で電圧がどちらへ動くかを見る。
- 組み合わせの不一致は、単体故障より多い。銘板・コモン・接続例の順で確認する。
- 地絡時の傾向は、NPN が「負荷の誤 ON」、PNP が「素子への過大電流」。保護設計の前提として知っておく。
PNP と NPN の違いを説明する必要が出てきたら、「スイッチが 0V 側にあるのが NPN で電流が流れ込む、+24V 側にあるのが PNP で電流を押し出す」から始めてください。 そのあとの詳細は、本記事の図に戻ればいつでも確認できます。
FAQ
Q1. PNP と NPN の違いを、いちばん短く言うと?
A. 出力の文脈では、NPN は電流を 0V 側へ吸い込むシンク、PNP は電流を +24V 側から押し出すソースです。内部のスイッチが電源のどちら側に入っているか、と言い換えても同じ意味になります。
Q2. NPN と PNP は、どちらを選べばよいですか?
A. 接続する相手の入力仕様(プラスコモンかマイナスコモンか)に合わせるのが原則です。既存設備への追加なら、既存盤の寄せ方に合わせます。単体の性能や好みで決める場面は、実務ではほとんどありません。
Q3. シンク=NPN、ソース=PNP と覚えてしまってよいですか?
A. 出力の文脈ではほぼその対応で通じます。ただし「シンク/ソース」という言葉は、機器側から見るか、受ける側(入力モジュール側)から見るかで同じ配線でも逆に呼ばれることがあり、実際にメーカー間で定義が食い違っています。 海外製の資料では特に注意が必要です。曖昧さを避けたいときは、NPN/PNP の表記と接続例の図で確認するのが確実です。
Q4. 配線したのにランプや負荷が動かないときは、何から見ればよいですか?
A. 給電(+24V と 0V)→ コモンの寄せ方 → OFF 時の端子電圧 → ON にしたときの電圧の動く方向、の順で確認します。NPN なら ON で下がる、PNP なら ON で上がる、が期待値です。詳しい手順は §8 にまとめています。
Q5. センサの NPN/PNP と、PLC 出力の NPN/PNP は別物ですか?
A. 役割は違いますが、電流の向き(シンク/ソース)の考え方は共通です。センサ出力は PLC 入力を駆動する小さな出力回路だと捉えると、同じ図式で読めます。
Q6. 日本は NPN が多く、海外は PNP が多いという話は本当ですか?
A. 傾向としては本当です。日本の設備では NPN が多く使われてきた一方、欧州や北米の新しい設備では PNP がほぼ標準になっています。背景には §7 で述べた地絡時の考え方の違いがあります。 ただし絶対の法則ではなく、業種や機器によって混在します。輸出設備や海外製機器との接続では特に、慣習ではなく相手機器の仕様書で確認してください。
Q7. リレー接点出力なら、NPN/PNP を気にしなくてよいですか?
A. 接点出力は極性の制約が緩いので、この問題の多くを回避できます。ただし応答速度・寿命・接点容量という別の制約があり、トランジスタ出力と混在させると保守時に混乱しやすくなります。図面上の表記を統一しておくことが大切です。
Q8. 短絡保護付きの出力なら、地絡を気にしなくてよいですか?
A. 保護は被害を小さくする仕組みであって、誤配線や地絡を正当化するものではありません。また §7-1 で見たように、NPN の地絡による誤 ON は素子保護では防げません。保護の有無に関わらず、配線経路の物理的な保護と点検は必要です。
Q9. N 型・P 型の半導体の仕組みから勉強し直すべきですか?
A. 制御配線の実務が目的なら、先に「端子から見た電流の向き」を身につけるほうが早く、応用も利きます。半導体物理の知識は、その後に興味に応じて掘り下げれば十分です。
Q10. この記事の動く図と実機の違いはどこにありますか?
A. 実機には配線抵抗・入力インピーダンス・漏れ電流・ノイズ・温度特性・保護回路があり、図はそれらを省いた原理の骨格です。原理の理解には図を、設計の数値には必ず実機のデータシートと規格を使ってください。

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