PLC(シーケンサ)の出力ユニットを選ぶとき、カタログには必ず「リレー出力」「トランジスタ出力」「トライアック出力」という言葉が並びます。 どれも「プログラムの ON/OFF を外部の機器に伝える出口」であることは同じなのに、選び方を誤ると現場で妙なことが起こります。 ランプを OFF にしたはずなのに薄く光り続ける。数年使ったら出力がひとつだけ動かなくなった。電磁弁を切った瞬間にトランジスタが壊れた。 ── これらはどれも故障や不良品の話ではなく、3つの出力方式の「スイッチの正体」の違いから素直に説明できる現象です。
この記事では、3つの出力方式の違いを「中に入っているスイッチが何者か」という一点から整理します。 結論を先に一行で言うと、リレーは機械の接点、トランジスタは DC 専用の向き付き半導体、トライアックは AC 専用の双方向半導体です。 この一行が腑に落ちれば、応答速度・寿命・対応電源といったカタログ上の違いも、冒頭に挙げたトラブルも、すべて同じ根から理解できます。 そして当サイトの流儀として、この記事の図はすべて動きます。ボタンを押すと図の中の電流が実際に流れたり止まったりするので、 文章で読んだ性質を、自分の目で確かめながら進んでください。
文章より先に図を触りたい場合は、「リレー出力 ── 機械接点だから AC も DC も切れる」へ進むと最初の動く図に着きます。図1〜図3で3方式を見比べてから戻ってくる読み方もできます。
この記事で分かること
よくある疑問と、答えているセクションの対応表です。
| 疑問 | セクション |
|---|---|
| 3つの出力方式は結局どこが違うのか? | §1 |
| リレー出力の仕組みと得意・不得意は? | §2(動く図) |
| トランジスタ出力はなぜ DC 専用なのか? | §3(動く図) |
| トライアック出力は何のためにあるのか? | §4(動く図) |
| 実務ではどう選べばよいのか? | §5(比較表) |
| 電磁弁やリレーコイルを切ると何が起きるのか? | §6(動く図) |
| 「中間リレー」とは何で、なぜ多用されるのか? | §7(動く図) |
| OFF にしたのにランプが消えないのはなぜか? | §8(動く図) |
| 現場でどう確認・切り分けするのか? | §9 / FAQ |
1. 3つの出力方式は「中のスイッチの正体」が違う ── まず全体像から
PLC の出力回路は、突き詰めれば「プログラムの指令で開閉するスイッチ」です。 プログラム上の出力ビット(Y0 など)が ON になると、出力ユニットの中のスイッチが閉じ、外部の負荷(ランプ・リレー・電磁弁など)に電流が流れる。 ここまでは3方式とも共通で、違うのはそのスイッチとして何を使っているかだけです。
| 方式 | スイッチの正体 | 一言でいうと |
|---|---|---|
| リレー出力 | 電磁石で動く機械接点 | 金属の接点が物理的にくっつく・離れる |
| トランジスタ出力 | 半導体(トランジスタ) | DC 専用・向きが決まった電子スイッチ |
| トライアック出力 | 半導体(トライアック=双方向サイリスタ) | AC の往復電流を通せる電子スイッチ |
スイッチの正体が決まると、性質はほとんど芋づる式に決まります。 機械接点は電流の向きを選ばない代わりに、動く部品なので遅く、擦り減ります。 トランジスタは速くて擦り減らない代わりに、電流の向きが固定されるので DC 専用です。 トライアックは AC の往復を通せる半導体ですが、後で見るとおり「OFF でも完全には切れない」というクセを持ちます。 以降の3つのセクションで、この3つを動く図で1つずつ確かめます。
図の見方の共通ルールを先に書いておきます。縦の境界線の左が外部(電源と負荷)、右が PLC 側です。 端子ラベルの 24V/AC/Y00/COM/0V は実機の端子台に相当する位置の目印です。 配線の色は、緑っぽい線がプラス側の電圧を持っている場所、灰色は 0V に近い場所、動く点は電流の向きと速さを表します。
「リレーは古い、半導体は新しい」というイメージで選ぶと失敗します。3方式は新旧の関係ではなく役割分担です。現在の実務でも3つとも現役で、負荷の電源(AC か DC か)と動作頻度によって適材適所が変わります。選び方は§5で整理します。
2. リレー出力 ── 機械接点だから AC も DC も切れる(図1)
リレー出力は、PLC の内部で小さな電磁石(コイル)に通電し、その磁力で機械接点を閉じる方式です。 プログラムが Y0 を ON にする → 内部コイルに電流が流れる → 接点が物理的にくっつく → 外部の回路がつながる、という流れです。 下の図では「ソフトY0」ボタンがプログラムの出力指令にあたります。ON にすると接点が閉じ、 +24V → 外部負荷 → Y00 端子 → 接点 → COM(0V)という経路で電流が流れ、負荷ランプが点きます。
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接点
負荷 = —作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit
接点は単なる金属どうしの接触なので、電流の向きも種類も選びません。図では代表として DC 24V を切っていますが、 同じ接点で AC 100V のランプも切れます(実機では接点の定格電圧・電流の範囲内で、という条件が付きます)。 この「AC でも DC でも、電圧クラスが違ってもよい」という懐の深さが、リレー出力が今でも汎用ユニットの定番である理由です。 加えて、コイル側(PLC 内部)と接点側(外部回路)が電気的に絶縁されている点も、機器を守るうえで効いています。
弱点は「機械が動く」ことそのものにあります。接点が実際に動くため応答は 5〜15ms 程度かかり、半導体のような高速開閉はできません。 また、開閉のたびに接点が擦り減ったり荒れたりするので、寿命は有限です。 目安として、抵抗負荷で数十万〜数百万回、後述する誘導負荷を対策なしで切ると桁で短くなります。 1日100回の開閉なら何年も持ちますが、毎秒何回も開閉する用途に使うと、数か月で寿命に達する計算になります。
リレー出力の寿命は「時間」ではなく「回数」で決まります。ユニットの寿命を見積もるときは、稼働年数ではなく1日あたりの開閉回数 × 稼働日数で計算してください。高頻度で開閉する出力だけトランジスタ出力に分ける、という設計はこの計算から出てきます。
3. トランジスタ出力 ── DC 専用の向き付きスイッチ(図2)
トランジスタ出力は、機械接点の代わりに半導体スイッチ(トランジスタ)で負荷を ON/OFF します。 下の図は NPN(シンク)タイプの例です。ソフトY0 を ON にすると PLC 内部のトランジスタが導通し、出力端子 Y00 が 0V 側へ引き込まれます。 電流は「+24V → 外部負荷 → Y00 端子 → PLC 内部 → 0V」という向きで流れ込み、確認ランプが点きます。 OFF のときは端子電圧が電源電圧近くまで浮き上がる(図では C1 ≒ 24V)ことにも注目してください。
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出力
C1 = —作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit
トランジスタは電流を流せる向きが決まっているため、DC 専用です。AC のように向きが交互に入れ替わる電流は扱えません。 その代わり、動く部品がないので応答は 0.1ms 前後と桁違いに速く、開閉で擦り減る接点も存在しないため、 電気的なストレス(過電流・過電圧・発熱)さえ管理すれば寿命は事実上、回数無制限です。 ステッピングモーターやサーボへのパルス出力、毎秒何十回も切り替わる高頻度制御は、トランジスタ出力の独壇場です。
なお、トランジスタ出力には NPN(シンク)と PNP(ソース)の2タイプがあり、電流の向きが逆になります。 この記事の図はすべて NPN で描いていますが、シンク/ソースの違いと選び方は 別記事「電気設計のPNPとNPNを動く回路図で理解する」で、同じ形式の動く図を使って詳しく扱っています。 接続先との極性合わせで迷ったら、そちらを参照してください。
トランジスタ出力の定格電流は 1 点あたり 0.1〜0.5A 程度と、リレー出力(2A 程度)より小さいのが普通です。「速くて長寿命だから」とランプやコンタクタをまとめてぶら下げると定格を超えます。電流の大きい負荷は§7 の中間リレーで受けるのが定石です。
4. トライアック出力 ── AC を静かに開閉する半導体スイッチ(図3)
「AC を切りたい。しかも高頻度で」という要求になると、リレーでは寿命が足りず、トランジスタでは向きが合いません。 そこで登場するのがトライアック出力です。トライアックは双方向に電流を通せる半導体スイッチで、AC の往復電流をそのまま扱えます。 下の図では左上が AC 電源、左下が戻り(COM)です。ソフトY0 を ON にすると導通し、負荷経路を電流が行ったり来たりする様子が見えます。
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導通
負荷 = —作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit
図では、トライアック本体のゲート駆動や保持電流といった細部を簡略化し、「AC をソフト指令で開閉できるスイッチ」として描いています。 また確認ランプは LED ではなく抵抗で模擬しています。LED は片方向にしか電流を通さないので、AC の往復が見えなくなってしまうためです。 ステータス表示の「双方向」は、この往復電流の大きさを読んでいます。
トライアック出力の立ち位置は「AC 版のトランジスタ出力」と考えると整理しやすいです。 機械接点がないので開閉寿命の心配がなく、応答もリレーより速い。 一方で AC 専用のため DC は切れず、そして半導体ゆえの独特なクセ ── OFF にしても微小な電流が流れ続ける「漏れ電流」 ── を持ちます。 このクセは現場トラブルの定番なので、§8で動く図を使って専用に扱います。
5. どう選ぶ? ── 負荷の電源と動作頻度でほぼ決まる
3方式の性質が出そろったので、比較表にまとめます。
| リレー出力 | トランジスタ出力 | トライアック出力 | |
|---|---|---|---|
| スイッチの正体 | 機械接点 | 半導体(DC 用) | 半導体(AC 用) |
| 対応電源 | AC・DC 両方 | DC のみ | AC のみ |
| 応答速度 | 遅い(5〜15ms 程度) | 速い(0.1ms 前後) | 中間(AC の半周期に縛られる) |
| 開閉寿命 | 有限(数十万〜数百万回) | 事実上無制限 | 事実上無制限 |
| 1 点あたりの電流 | 大きめ(2A 程度) | 小さめ(0.1〜0.5A 程度) | 中間(0.6A 程度) |
| 高速パルス出力 | × | ○ | × |
| OFF 時の漏れ電流 | なし(完全に切れる) | ほぼなし | あり(数 mA・要注意) |
| 要注意ポイント | 誘導負荷での接点消耗(§6) | サージによる破壊(§6)・極性(§3) | 漏れ電流(§8)・発熱 |
選定の考え方は、突き詰めると2つの質問に集約されます。 「負荷の電源は AC か DC か」と「どれくらいの頻度で開閉するか」です。
- 負荷が DC で、高速パルスや高頻度開閉がある → トランジスタ出力
- 負荷が AC で、高頻度開閉がある → トライアック出力(小型負荷なら §8 の漏れ電流対策を確認)
- 開閉頻度が低く、AC/DC が混在する・将来何をつなぐか確定しない → リレー出力
- 電流の大きい負荷・別電圧の負荷 → 出力方式を問わず §7 の中間リレーを介する
実務では「基本をトランジスタ出力に統一し、AC 負荷や大電流負荷だけ中間リレーで受ける」という方針もよく採られます。 出力ユニット自体を高速・長寿命に保ちながら、負荷側の多様さには中間リレーで対応する、という役割分担です。 どちらの方針を採るにしても、根拠は上の2つの質問に立ち返ることに変わりありません。
既設盤の増設・改造では、方式を自分の好みで変えないほうが安全です。既設の出力ユニットの方式・コモン構成に合わせるのが第一で、変える場合は負荷側の配線とサージ対策まで含めて見直しが必要になります。
6. 誘導負荷を切った瞬間に何が起きる? ── サージと還流ダイオード(図4)
リレーコイル・電磁弁・ソレノイドのようにコイルを含む負荷(誘導負荷)には、「流れていた電流を急に止められない」という性質があります。 出力を OFF にした瞬間、行き場を失った電流が出力端子に高い電圧 ── サージ(逆起電力) ── となって現れます。 半導体であるトランジスタはこのサージに弱く、対策なしで誘導負荷を直結すると、ある日突然その1点だけ壊れる、という典型的な故障につながります。
対策の定石が、負荷と並列に入れる還流ダイオード(フライバックダイオード)です。 OFF の瞬間、コイルに残った電流をダイオード経由でぐるぐる回して熱として消費させ、サージの発生そのものを抑えます。 下の図では、ソフトY0 が出力の ON/OFF、もう1つのボタンが還流ダイオードの有無です。次の手順で違いを見比べてください。
- ダイオード「切」のまま、ソフトY0 を ON → OFF する。OFF の瞬間に C1 電圧が大きく跳ね上がる(サージ注意の表示が出る)
- ダイオードを「入」にして同じ操作をする。OFF の瞬間の跳ね上がりが抑えられる
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出力
C1 = —保護
保護 = なし作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit
このサージは、リレー出力にとっても他人事ではありません。接点で誘導負荷を切ると、サージが接点間の火花(アーク)になり、 接点の消耗を桁違いに早めます。§2 で「誘導負荷を対策なしで切ると寿命が桁で縮む」と書いたのはこのためです。 DC の誘導負荷には還流ダイオード、AC の誘導負荷には CR 式サージキラーやバリスタといった保護部品を、負荷側に添えるのが基本です。
還流ダイオードには極性があります。カソード(帯マーク側)を+側に向けて負荷と並列に接続してください。逆向きに付けると、出力を ON にした瞬間にダイオードが短絡経路になり、ダイオードと出力素子の両方を壊します。また、還流ダイオードを入れるとコイルの電流がゆっくり減るため、リレーや電磁弁の復帰(OFF になる動作)がわずかに遅くなる副作用があります。高速で切りたい用途では、ツェナーダイオード併用などの調整手段が使われます。
7. 中間リレー ── トランジスタでコイルを駆動し、接点で AC を切る(図5)
ここまでの内容を組み合わせると、現場の定番構成が1つ導けます。 「トランジスタ出力は速くて長寿命だが DC 専用・小電流」「リレーの接点は AC も大電流も切れる」── ならば、PLC のトランジスタ出力で小さなリレーのコイル(DC)を駆動し、そのリレーの接点で AC 負荷を切ればよい。 この橋渡し役のリレーを中間リレーと呼びます。
下の図は、上段が DC(コイル側)、下段が AC(接点側)です。ソフトY0 を ON にすると、 トランジスタがコイルに通電し、それに連動して下段の接点が閉じ、AC 確認ランプに電流が流れます。 1つの指令で「DC の小さな回路」と「AC の負荷回路」が連動する様子を確かめてください。 コイルには §6 の教訓どおり還流ダイオードを添えてあります。
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出力
コイル側 = —接点
AC負荷 = —作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit
中間リレーの利点は「AC が切れる」だけではありません。 接点はいずれ摩耗する消耗品ですが、中間リレーならソケットから抜いて数百円のリレーを交換するだけで済み、 PLC の出力ユニットそのものを延命できます。負荷側で短絡などの事故が起きたときに、被害を中間リレーで食い止めやすいという保険の意味もあります。 代償は、リレーを経由する分だけ応答が遅くなること(リレー1段で 10ms 前後)と、盤内の部品点数・配線が増えることです。 高速性が要らない AC 負荷・大電流負荷では、利点が代償を上回ることがほとんどです。
8. OFF なのにランプが薄く点く ── トライアックの漏れ電流(図6)
トライアック出力には、機械接点との決定的な違いが1つあります。接点の OFF は物理的な切断なので電流は完全にゼロになりますが、 半導体の OFF は「ほとんど流れない状態」であって、微小な電流(漏れ電流)が流れ続けます。 大きさは数 mA 程度。大きな負荷にとっては誤差ですが、相手が小さな負荷だと無視できません。
下の図では、ソフトY0 で開閉する主導通経路のほかに、常につながった細い経路(漏れ経路)を並べて、この現象を再現しています。 ソフトY0 を OFF のままにしてください。負荷電流の表示は 1mA 弱までしか下がらず、「漏れ(OFFでも残る)」と表示されます。 ON にすると主導通に切り替わり、電流が桁違いに大きくなります。
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導通
負荷 = —作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit
この数 mA が実機で引き起こす症状は、主に2つ知られています。 1つ目は小型ランプの薄点灯です。LED パイロットランプは数 mA〜20mA 程度で光り始めるため、 漏れ電流だけで「OFF のはずなのにぼんやり光る」状態になります。 2つ目は小型リレーや電磁弁の復帰不良です。漏れ電流が負荷の復帰電流を上回っていると、 指令を切っても負荷が完全に OFF に戻れません。
対策の定石は、負荷と並列にブリーダ抵抗(ダミー抵抗)を入れて、漏れ電流の逃げ道を作ることです。 抵抗値は数 kΩ〜数十 kΩ、電力定格は AC 100V 系で 1/2W〜数 W 程度が目安で、漏れ電流の大部分が抵抗側を流れるように選びます。 それでも解決しない小型負荷や、そもそも OFF 時に完全な切断が必要な回路では、その負荷だけリレー出力(または中間リレー)に振り替えるのが確実です。
「OFF なのに薄く点く」症状を見て、出力ユニットの故障やプログラムの誤りを疑って時間を溶かすケースが後を絶ちません。トライアック出力(および AC 対応 SSR)に小型負荷という組み合わせを見たら、まず漏れ電流を疑ってください。故障ではなく仕様です。
9. 現場での確認手順 ── 図の知識をテスターの動きに翻訳する
最後に、ここまでの内容を「出力が動かない・切れないとき」の切り分け手順に翻訳しておきます。上から順に潰すのが早道です。
- プログラム側の出力表示を見る ── 出力ビットが本当に ON/OFF しているか。ここが動いていなければ配線の前にプログラムとインターロック条件を確認する
- 出力ユニットの表示 LED を見る ── 指令と LED が連動しているか。LED が点くのに負荷が動かないなら、それ以降(配線・負荷・方式の相性)に絞れる
- 方式と負荷の電源種別を照合する ── トランジスタ出力に AC、トライアック出力に DC をつないでいないか。図面ではなく実物の型番で確認する
- 端子電圧の動きを測る ── 指令の ON/OFF に合わせて出力端子の電圧が動くか。NPN トランジスタ出力なら ON で 0V 近くへ下がる(シンク/ソースの見方は別記事)
- 「切れない」症状なら漏れ電流を疑う ── トライアック/SSR + 小型負荷の組み合わせで OFF が効かないときは §8。ブリーダ抵抗か、リレー出力への振り替えを検討する
- 「そこだけ壊れる」症状ならサージを疑う ── 特定の出力点だけ繰り返し壊れるなら、その負荷は誘導性ではないか。§6 の保護部品の有無と極性を確認する
- リレー出力なら開閉回数を数える ── 長年使った盤で特定の出力だけ接触が不安定なら、接点寿命を疑い、ユニット交換または中間リレー化を検討する
盤内で出力方式が混在している場合、図面に「R(リレー)/T(トランジスタ)/TA(トライアック)」のように方式を明記しておくと、保全担当が上の手順 3 を一瞬で終えられます。トラブル対応の速さは、設計時のこうした一手間で決まります。
まとめ ── スイッチの正体さえ掴めば、選定もトラブルも読める
- 3方式の違いは中のスイッチの正体に尽きる。リレー=機械接点、トランジスタ=DC 用半導体、トライアック=AC 用半導体。
- リレー出力は AC/DC 両用で電流も大きめだが、遅く、寿命は回数で尽きる。
- トランジスタ出力は速くて長寿命だが DC 専用・小電流。シンク/ソースの極性合わせも忘れずに。
- トライアック出力はAC の高頻度開閉が得意。ただし OFF でも漏れ電流が残る。
- 選定は「負荷は AC か DC か」「開閉頻度はどれくらいか」の2問でほぼ決まる。
- 誘導負荷には保護部品(DC は還流ダイオード、AC はサージキラー)。これはトランジスタの破壊防止にも、リレー接点の延命にも効く。
- 大電流・AC・交換性が欲しい場面は中間リレーで受けるのが定番。
- 「OFF なのに切れない」は漏れ電流、「そこだけ壊れる」はサージ、「長年使って不安定」は接点寿命 ── 症状から方式のクセへ逆引きできる。
カタログの「リレー/トランジスタ/トライアック」という3つの言葉が、「機械接点/DC 半導体/AC 半導体」という3種類のスイッチに見えてくれば、この記事の目的は達成です。 選定で迷ったとき、現場で妙な症状に出会ったときは、いつでもこの記事の動く図に戻ってきてください。
FAQ
Q1. リレー・トランジスタ・トライアック出力の違いを一言でいうと?
A. 中のスイッチが、機械接点(リレー)か、DC 専用の半導体(トランジスタ)か、AC 専用の半導体(トライアック)かの違いです。応答速度・寿命・対応電源の差は、すべてここから派生します。
Q2. 迷ったらどれを選べばよいですか?
A. まず負荷の電源(AC か DC か)と開閉頻度で絞ります。DC で高頻度・高速ならトランジスタ、AC で高頻度ならトライアック、低頻度で AC/DC 混在・用途未確定ならリレーが基本線です。既設盤の増設では、既設の方式・コモン構成に合わせることを優先してください。
Q3. リレー出力の寿命は実際どれくらいですか?
A. 抵抗負荷で数十万〜数百万回が目安です。ただし誘導負荷を保護部品なしで切ると桁で短くなります。時間ではなく開閉回数で決まるため、「1日あたりの開閉回数 × 稼働日数」で見積もってください。
Q4. トランジスタ出力で AC 負荷を切れますか?
A. 切れません。トランジスタは電流の向きが固定された DC 専用スイッチです。AC 負荷を扱いたい場合は、トライアック出力・リレー出力を使うか、トランジスタ出力+中間リレーの構成(§7)にします。
Q5. トライアック出力で DC 負荷を切れますか?
A. 使えません。トライアックは電流がゼロを横切る瞬間(AC のゼロクロス)を利用して OFF に戻る素子のため、電流がゼロにならない DC では一度 ON にすると切れなくなります。DC はトランジスタ出力かリレー出力で扱ってください。
Q6. 還流ダイオードはリレー出力のときにも必要ですか?
A. 出力素子の保護という意味では必須ではありませんが、接点の延命には有効です。DC の誘導負荷には還流ダイオード、AC の誘導負荷には CR 式サージキラーやバリスタを負荷側に添えるのが基本です。アークによる接点消耗が桁違いに減ります。
Q7. OFF にしてもランプが薄く点いたままです。故障ですか?
A. トライアック出力や AC 対応 SSR に小型ランプをつないでいるなら、まず漏れ電流(§8)で、故障ではなく仕様です。負荷と並列に数 kΩ〜数十 kΩのブリーダ抵抗を入れて逃げ道を作るか、その負荷だけリレー出力に振り替えてください。
Q8. 中間リレーを入れるデメリットはありますか?
A. リレー1段分(10ms 前後)応答が遅くなること、盤内の部品点数・配線・スペースが増えることです。逆にいえば、高速性が不要な AC 負荷・大電流負荷では、接点交換のしやすさと PLC 本体の保護というメリットが上回る場面がほとんどです。
Q9. トランジスタ出力の NPN と PNP はどう関係しますか?
A. NPN(シンク)と PNP(ソース)は、トランジスタ出力の中での電流の向きの違いです。接続先の入力機器のコモン極性と合っていないと、健全な機器どうしでも動きません。詳しくは「電気設計のPNPとNPNを動く回路図で理解する」で、同じ形式の動く図を使って解説しています。
Q10. この記事の動く図は実機とどこが違いますか?
A. 実機には配線抵抗・接点バウンス・トライアックのゲート駆動や保持電流・保護回路・温度の影響などがありますが、図ではそれらを省いて原理の骨格だけを見せています。原理の理解には図を、実設計の数値には各メーカーのデータシートと規格を使ってください。

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