ロータリーエンコーダーを動く図で解説(2)単トラックPRBS・ハイブリッド・バーニア

ロータリーエンコーダーを動く図で解説(2)単トラックPRBS・ハイブリッド・バーニア

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ロータリーエンコーダーの円盤は、同心円がきれいに並んだものばかりではありません。バーコードのような不規則な環が1本だけ刻まれた円盤や、外周だけが極端に細かく、その内側に別の粗い模様を抱えた円盤があります。同心円の並びなら「何本目のトラックが明るいか」を数えれば読み方の見当がつきますが、この手の円盤は、一見しただけでは何をどう読み取っているのか分かりません。

こうした円盤には、共通した動機があります。トラックを1本ずつ足していけば絶対位置は表せますが、トラックの本数は、そのまま円盤の太さと加工の手間に跳ね返ってしまいます。このページで扱う3つの様式は、いずれもトラックを増やさずに、あるいは性質の違う模様を混ぜることで、絶対位置や高い分解能を得ようとするものです。

多トラックのバイナリ、Gray、インクリメンタルから順に見たい場合は、(1)多トラック符号からどうぞ。白が1、黒が0、外側トラックがLSBという図の約束も、そちらで説明しています。

疑問 該当する図
トラック1本だけで絶対位置を表せるのはなぜか 単トラック(PRBS / M系列)(図1)
細かい模様と粗い模様が同居した円盤は何をしているのか ハイブリッド(粗絶対+細周期)(図2)
周期がわずかに違うトラックを重ねると何が分かるのか バーニア(周期差)(図3)
💡 Tip

各図の円盤はドラッグで回せます。ここで扱う3つは、止まった絵よりも、動かしたときのランプの変わり方に特徴が出ます。

単トラック(PRBS / M系列)(図1)

符号化の原理

ビットごとに同心トラックを増やすのをやめて、円周上の1本の不規則な二値列に絶対位置を載せる方式です。この二値列には擬似乱数(PRBS)を使い、最大長のものを選ぶとM系列になります。

仕組みの要は、長さ n の連続した窓が、どの位置で切り取っても一意になるという性質です。隣り合う n ビットさえ読めれば、それが円周上のどこであるかが一通りに決まります。トラックは1本で足りるので円盤を細くでき、模様の見た目はバーコードの環に近くなります。

ここで問題になるのが、窓をどうやって読むかです。1点しか見ないセンサーでは、その位置が明か暗かしか分かりません。位置を決めるには連続する n ビットが同時に必要なので、読取側には n 個ぶんを並べたヘッドを置くか、円盤が動くのに合わせて1ビットずつ取り込み、シフトレジスタで直前の n ビットを保持し続けるか、どちらかの仕掛けが要ります。

そのため実機では、読み取りのタイミングを合わせるための同期トラックが添えられることも多くなります。トラックの本数を1本に減らした代わりに、読取ヘッドの側が複雑になる、という交換が起きていると考えてください。

本記事の図では

符号は1トラックのみで、同期帯は描いていません。円周には周期 2n−1 のM系列を並べ、固定ヘッド x0 以降が連続したセグメントを窓として読みます。

ランプの並びは、加重されたビット(MSBやLSB)ではなく、窓に入っているビットの並びそのものです。図1と図2で意味が違う点なので、(1)のアブソリュートと同じつもりで読まないよう注意してください。「細かさ」のスライダは窓のビット数、つまり周期の指数として効きます。

⚠️ よくある落とし穴

ランプの並びを十進として読んでも、角度には対応しません。単トラックの符号では、ランプが表しているのは「いま窓に入っているビット列」であって、位置の数値ではありません。位置を得るには、その並びを系列上のどこかへ照合する処理が別に要ります。

ハイブリッド(粗絶対+細周期)(図2)

符号化の原理

高分解能のアブソリュートでよくある組み合わせです。粗い絶対符号(数ビットのトラックやバーコード)で「いまどの区間にいるか」を決め、外周などに置いた細かい周期帯を補間して、区間の中での精密な位置を出します。

役割を2段に分けているのが要点です。絶対位置の担当と、分解能の担当を別のトラックに持たせることで、絶対符号のビット数を増やしすぎずに細かい位置を得られます。実物の写真では、外側が細かく、内側または別の帯に粗い符号が乗った、ごちゃついた見た目になりやすい系統です。

本記事の図では

外側に細かい明暗の周期帯を、その内側に粗いGrayの多トラックを重ねた簡略図にしています。ランプは粗ビット(MSBからLSB)に加えて、細周期用の「細」ランプがあります。

ただし、補間の演算そのものは行っていません。細帯の直下にあるセンサーが 0 と 1 で点滅する様子までを見せる図で、そこから区間内の角度を計算する段階までは実装していません。粗い符号で区間が決まり、その上を細い周期が速く流れていく、という役割分担が目で追える状態だと考えてください。

バーニア(周期差)(図3)

符号化の原理

ノギスのバーニア(副尺)に似せて、周期が1つだけ違う複数の周期トラックを重ねる方式です。主と副の位相差から粗い絶対情報を取り出し、デジタルの絶対トラックを何本も並べる代わりに、周期信号の差で位置を絞り込みます。

ねらいはトラック本数の節約です。絶対位置のビットを1本ずつトラックに割り当てていく代わりに、2本の周期トラックのずれ方を使うことで、小型のまま高い分解能を狙えます。

本記事の図では

外側を主周期、内側を「主より1周期だけ少ない」副周期の明暗帯にしています。ランプは「主」と「副」の2つだけで、点滅の速さのわずかなずれが、そのまま位相差の直感になります。

こちらも、位相差から角度を合成する処理は行っていません。周期差という様式が、円盤の上でどう見えるかを確かめるためのデモです。

⚠️ よくある落とし穴

図2の「細」ランプと、図3の「副」ランプは、見た目が似ていても役割が違います。前者は区間の中を補間するための細かい周期、後者は主周期との差から粗い絶対情報を取り出すための副周期です。どちらのランプも、単体では位置を表していません。

3つの様式は、どんな機器で使われているのか

こちらの3つは、いずれも「置ける場所が狭い」「円盤を厚くできない」という制約とセットで語られます。以下は一般的な傾向で、実機の方式は機種ごとに異なります。

単トラック(PRBS / M系列)

符号が1本で済むぶん、円盤を半径方向に薄くできます。この利点が効くのは、軸の中心を配線や配管が通る中空構造や、機構の隙間に押し込むしかない小型の絶対位置検出です。

ただし、先に見たとおり、読取側には窓を読むための仕掛けが要ります。円盤を薄くしたぶんの手間がヘッドと処理へ移る格好になるため、多トラックの単純な置き換えとして選ばれる方式ではありません。

ハイブリッド(粗絶対+細周期)

高分解能のアブソリュートでは、この組み合わせが主流と言ってよい構成です。粗い絶対符号だけで高い分解能を出そうとすると、トラックの本数が現実的でなくなってしまうためです。

サーボモーターに組み込まれる位置検出や、精密ステージの角度検出のように、絶対位置と細かい分解能の両方を要求される場所で使われます。

バーニア(周期差)

周期トラック2本で粗い絶対情報をまかなえるため、トラックを何本も並べる余裕がない小型・薄型の設計と相性がよい方式です。光学式のほか、磁極の対数を1つだけ違えた磁気式でも同じ考え方が使われます。

同じ周期差の発想は、軸が何回転したかを数える多回転の検出にも応用されます。歯数がわずかに違う歯車を組み合わせ、その位相差から回転数を割り出す方式です。

⚠️ よくある落とし穴

この3つは、円盤の模様だけを見て方式を言い当てるのが難しい系統です。外周が細かい円盤がすべてハイブリッドとは限りませんし、不規則に見える環がPRBSとも限りません。方式を確かめたいときは、模様の見た目ではなく、その機器が絶対位置をどうやって出しているかの記述を探すほうが確実です。

3つの様式が節約しているもの

ここまでの3つは、いずれも「トラックを増やさずに済ませる」という同じ動機から出発しながら、節約の仕方が違います。

様式 絶対位置の出どころ 符号トラックの本数 この図で省略した処理
単トラック(PRBS) 連続する窓のビット列が一意になる性質 1本(同期帯は描かず) 窓から位置への照合
ハイブリッド 粗い絶対符号で区間を決める 粗い符号ぶん+細周期の帯 細周期による補間
バーニア 主と副の周期差から生じる位相差 2本(主・副) 位相差からの角度合成

トラックの本数を減らすほど、円盤そのものは単純になります。その代わり、位置を取り出す仕事が読取側の処理へ移っていきます。この記事の図で省略しているのは、まさにその移った先の処理です。円盤の模様がどこまでを担い、どこから先が演算なのか、という切れ目を見るための図だと考えてください。

トラック1本が1ビットに対応する古典的な様式、つまりバイナリ、Gray、インクリメンタルについては、(1)多トラック符号にまとめています。

よくある質問

Q1. 単トラックで済むなら、なぜ多トラックの円盤が残っているのですか?

A. 単トラックは円盤を細くできますが、読み取った窓のビット列を系列上の位置へ照合する処理が必要になります。多トラックのアブソリュートは、読み取った組み合わせがそのまま番地になるので、読取側の処理が単純です。円盤の単純さと読取側の単純さの、どちらを取るかという関係になります。

Q2. PRBSの円盤は、商品についているバーコードと同じものですか?

A. 見た目は似ていますが、成り立ちが違います。バーコードは決まった文字列を符号化したものです。PRBSの円盤は、円周のどこを切り取っても長さ n の窓が一意になるという性質を使って、位置そのものを表しています。図の円盤を回して、窓の中のビット列が位置ごとに違うことを確かめてみてください。

Q3. ハイブリッドの図にある「細」ランプは、何を表していますか?

A. 外周の細かい周期帯の真下にあるセンサーが、いま明を見ているか暗を見ているかです。実機ではこの信号を補間して区間内の精密な位置を出しますが、この図では補間の演算までは行っておらず、0 と 1 の点滅を表示するにとどめています。

Q4. バーニアは、ノギスの副尺と同じ原理ですか?

A. 周期がわずかに違う目盛りを重ねて、そのずれから細かい値を読む、という着想は共通です。この記事の図も、その直感を借りて主周期と副周期を並べています。ただし図では位相差から角度を合成する処理までは実装しておらず、2つの周期のずれ方が見えるところまでにしています。

Q5. この記事の図で省略されている処理をまとめて教えてください。

A. 単トラックでは窓のビット列から位置を求める照合、ハイブリッドでは細周期による補間、バーニアでは位相差からの角度合成を、いずれも実装していません。また単トラックの図には、実機で付くことの多い同期トラックを描いていません。円盤の模様と、そこから直接読める信号までを見せる図です。

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