装置と工場の災害耐性を定量的に考える ― インフラ別・災害別に見る設計条件

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装置は、銘板の定格どおりの条件だけで動いているわけではありません。電圧は公称値から短時間外れることがあり、地震では床に加速度がかかり、屋外では風圧、屋根では積雪荷重がかかります。こうした外部条件は、装置側では別の物理量になります。電圧の偏差は電源が電圧を維持できる時間やモータのトルクに、加速度はアンカー荷重に、風速は面圧に、積雪の深さは荷重になります。

そのため、災害の種類ではなく、どの量が何に作用するかということが重要です。この記事では、どの工場にもある電源と受電から始め、続いて地震、台風、積雪について、現象と結果に重点を置いて扱います。

この記事の要点

この節で解説すること
電圧偏差と機器の許容範囲同じ瞬低でも、24 V、モータ、溶接機、空調では止まり方が違う
受電方式と設備側のリスクアメリカ・欧州・日本・ブラジルで、同じ負荷でも電圧が下がる場所と停電の範囲が変わる
地震の加速度とアンカー荷重震度の目安を水平力に直す。加速度がアンカーを引っ張る
台風の風速と風圧屋外盤の例で、風速を風荷重に直す
積雪深と積雪荷重架台屋根の例で、深さを下向きの荷重に直す

電圧偏差と機器の許容範囲

制御盤の銘板が 200 V でも、実際の電圧は公称値からずれることがあります。短時間下がることを瞬時電圧低下(瞬低)、途切れることを瞬時停電(瞬停)、短時間上がることを瞬時電圧上昇と言います。地域や系統で頻度は違いますが、装置側でまず確認するのは、その偏差が交流入力なのか、制御用 24 V なのか、モータ端子なのかです。

その確認のとき、銘板の「±10%」は、現場の電圧が常にその範囲に収まるという意味ではありません。許容範囲、メーカの保証範囲、設計上の余裕は、それぞれ別の数字です。また、同じ ±10% でも、交流 200 V と制御用 24 V とモータ端子では対象が違います。そのため、交流入力が許容内でも、安定化電源の出力が電圧を維持できる時間を使い切れば、PLC は止まります。

同じ電圧偏差でも、機器によって止まる条件が違います。具体的には、制御用 24 V、モータ、電気溶接機、空調では、対象の電圧も、ほかの機器へ与える影響も違います。その違いを次の表にまとめます。

機器対象の電圧先に起きる不具合ほかの機器への影響
PLC・制御(24 V)安定化電源の出力と、電圧を維持できる時間24 V が落ちて CPU・センサ・フィールドバスが止まる。電磁接触器は PLC より先に切れることが多い負荷としては小さい
モータ端子電圧。インバータなら直流母線トルクはおよそ電圧の二乗に比例する。電圧が低いと同一負荷で電流が増え、過熱や回転停止につながる始動電流が周囲の電圧を下げる
電気溶接機パルス中の端子電圧アークが不安定になる。インバータ機は直流母線の不足電圧で止まる工場内の瞬低の主な原因になりやすい
空調圧縮機の端子と電磁接触器瞬低で接触器が落ち、再始動で再び電圧が下がる。工程用空調が止まると工程も止まる圧縮機の始動が瞬低の原因になる

表の PLC について補足すると、広範囲入力の安定化電源には、交流 85 V から 264 V まで受けられるものがあります。そのため、「交流が ±10% なら PLC は耐える」は、交流入力と 24 V 出力を混同した言い方です。PLC が止まらないかどうかは、出力の 24 V が何ミリ秒維持できるかで決まります。一方、溶接機と空調は、電圧低下の被害を受けるだけでなく、周囲の電圧を下げる原因にもなります。また、インバータやサーボでは、モータと同じく直流母線の電圧を見ます。

下の図は、同じ電圧波形に対して、空調・モータ・溶接機・24 V が、それぞれどの数値で止まるかを示します。

瞬低の電圧波形と、四つの機器が止まる数値条件を示した図です。電圧 0.82 で空調、トルク 0.52 でモータ、保持切れで 24 V が止まり、溶接パルスは低下の原因にもなります。画像では電圧が途中まで落ち、空調が消え、溶接パルスが残っています。
同じ瞬低でも、電圧がしきい値を下回ると空調が先に止まり、溶接機のパルスは周囲の電圧を下げる原因にもなる。
💡 Tip

交流入力の許容範囲を確認したあと、24 V を維持できる時間を別に確認します。接触器が先に落ちると、PLC 本体が動いていても出力は切れます。

⚠️ よくある落とし穴

銘板の ±10% を、盤内の全機器に共通の耐量だと思い込むことです。対象の電圧が違うと、残る機器と止まる機器が分かれます。

受電方式と設備側のリスク

工場が電気を受ける電圧の階級が違うと、停電がどこまで広がるかと、構内の負荷が電圧を下げる場所が変わります。階級の名前とよくある電圧は地域で違います。一方、設備側で使う換算は同じです。階級から、電圧が下がる場所と停電の範囲へ直します。ただし、階級の名前は電圧の範囲であり、設備が止まらなくなる保証ではありません。

表を読む前に、言葉を二つ確認します。同じ電圧で盤がつながっている部分を母線、変圧器の低い電圧の側を二次側と言います。なお、次の表は地域ごとに切り替えられます。最初に開く地域は、この記事の言語に合わせています。

周波数は東日本で 50 Hz、西日本で 60 Hz です。交流 600 V 以下を低圧、600 V を超え 7 000 V 以下を高圧、7 000 V を超えるものを特別高圧と言います。工場の低圧受電は 200 V または 400 V、高圧は 6.6 kV、特別高圧は 22 kV や 66 kV が多いです。そのとき、変圧器が電力会社側にあるか構内にあるかが、系統側の電流と停電の広がりを変えます。

受電よくある電圧変圧器の位置設備側で先に変わること
低圧200 V または 400 V電柱側(電力会社)にあることが多い構内配線の電圧降下が大きい。また、溶接の変動が隣の 24 V と系統に届きやすい。停電は変圧器を共用する範囲になる
高圧6.6 kV構内系統側の電流は小さい。ただし、変圧器の低い電圧側の始動と溶接は残る。構内の事故を構内で切れないと、工場全体が止まる
特別高圧22 kV や 66 kV など構内(規模が大きい)系統側の電圧変動は小さい。一方、止まると範囲が広く、復旧に時間がかかることが多い

同じ溶接のパルスでも、受電の階級が違うと、大きな電流が流れる場所が違います。次の表は、200 V・150 A のパルス(約 30 kW)を流したときの目安であり、機器の選定に使う値ではありません。

受電二次側の電流系統側の電流の目安隣の 24 V
低圧150 A150 A(構内と同じ)同じ母線なら下がりやすい。また、系統にも届く
高圧150 A(二次)約 3 A(6.6 kV・三相)二次の母線なら下がる。ただし、系統は下がりにくい
特別高圧150 A(二次)約 0.3 A(66 kV・三相)二次は高圧と同じ。ただし、停電が起きると範囲が広い

注: 系統側の電流は、約 30 kW をその電圧の三相で流した目安です。配線抵抗や変圧器のインピーダンスは含めていません。

どの地域でも、階級を上げると系統側の電流は小さくなります。ただし、変圧器の二次側に置いた溶接とモータ始動は残ります。

下の図は、階級の名前が地域で違っても、仕組みは同じであることを示します。図では上から順に、利用電圧では低下が系統まで届き、構内の変圧器で受けると系統電流は小さく、最も高い階級では停電の範囲が広くなります。また、24 V はどの階級でも下がります。

受電階級ごとに、電圧低下の届く範囲と停電の広がりを三段で比べた図です。階級の名前が地域で違っても仕組みは同じで、二次側の 24 V はどの階級でも下がることを説明しています。画像では三つの階級の違いが出そろったところです。
上から順に、利用電圧では低下が系統まで届き、構内受電では系統電流が小さく、最上位では停電の範囲が広い。また、24 V はどの階級でも下がる。

一方、受電が 1 回線だと、その線の事故で工場全体が止まります。ただし、2 回線でも、同じ経路なら同時に止まることがあります。構内の事故を構内の遮断器で切れないと、上位が先に切れて工場全体が止まります。なお、施工手順は扱いません。

受電の階級と回線を決めたあと、保護と、電圧を維持する装置(UPS)の配置を検討します。24 V だけを維持するか、工程全体を維持するかで、必要な容量が違います。

💡 Tip

階級を上げると系統側の変動は小さくなります。二次側の 24 V と溶接は、別の条件として残します。

⚠️ よくある落とし穴

受電の階級を上げれば瞬低がなくなる、と思い込むことです。系統側の電流が小さくなっても、二次側の始動と溶接は残ります。

地震の加速度とアンカー荷重

地震で床が加速しても、装置の質量はすぐに同じ動きにはなりません。加速度に質量をかけると力になり、これを慣性力と言います。自重を W、重力加速度を g、水平加速度を a とすると、水平の慣性力は F = (a/g) W です。ですから、0.3 g なら自重の 0.3 倍、1 g なら自重と同じ水平力がかかります。その力は、アンカーと据付板を引っ張るか、脚が浮く向きにもなります。

その加速度を、発表される震度からそのまま取ることはできません。マグニチュードは震源の規模です。一方、震度は、その地点での揺れの強さです。日本では気象庁震度階級を使い、0 から 7 までで、5 と 6 は弱と強に分かれます。海外では改正メルカリ震度階(MMI)で報じられることが多いです。ただし、設備の計算では水平加速度(単位 g)を使います。なお、遠いマグニチュード 7 より、近いマグニチュード 5 の方が、現場の加速度が大きいことは珍しくありません。

次の表は、床に固定した質量へ、水平加速度がそのままかかる場合の目安です。気象庁の震度は最大加速度だけでは決まらないため、同じ階級でも地点により加速度は幅を持ちます。したがって、機器の選定に使う値ではありません。

ケース改正メルカリ気象庁震度水平加速度の例自重の何倍
ほとんどの人が驚くV〜VI40.03〜0.08 g0.03〜0.08 倍
家具が倒れることがあるVII5強0.15〜0.25 g0.15〜0.25 倍
立っていることが困難VIII6弱0.25〜0.3 g0.25〜0.3 倍
固定していない家具の多くが倒れるIX6強0.3〜0.4 g0.3〜0.4 倍

注: 改正メルカリ震度階(MMI)は、米国などで使う揺れの階級です。気象庁震度は日本の気象庁が使う階級です。表の対応は近似です。

例えば、質量 1 トンの盤なら、震度 6 弱の目安(約 0.3 g)で、水平力は約 3 kN(約 300 kg相当)です。また、上層階や剛性の低い架台では、地表面より加速度が増えることがあります。そのうえ、重心が高いと、同じ加速度でも引張側アンカーの荷重はさらに増えます。

据付側では、ボルトをあらかじめ締め付けておくと、外力の変動の多くを接合面の圧縮で受けます。

下の図は、加速度が大きくなるほど、引張側アンカーの荷重が増える関係です。アンカー径の選定は扱いません。

床の加速度と盤の慣性力、アンカーボルトの引張を、正面の盤と床を基準に示した図です。加速度に質量をかけるとアンカーが引っ張られる関係を説明しています。画像では床が右へ加速し、右側のボルトが太く引張側になっている途中です。
加速度が大きくなると、引張側アンカーの荷重が増える。
⚠️ よくある落とし穴

震度階級だけでアンカーを選ぶことです。同じ階級でも、加速度の波形、質量、重心高さが違うと、アンカー荷重は変わります。

台風の風速と風圧

屋外盤、架台、搬送カバーに作用するのは風速そのものではなく、面に働く圧力です。圧力は風速の二乗にほぼ比例するため、風速が倍になると面荷重はおよそ四倍になります。進路の地図は、その圧力の代わりにはなりません。

例として、幅 0.8 m、高さ 2.0 m の屋外盤を置きます。風を受ける面積は 1.6 m² です。速度圧(風速から求める圧力)q は、空気密度を約 1.2 kg/m³ としたときの 0.6 v²(単位 N/m²、v は m/s)です。水平方向の風荷重は、この速度圧に面積をかけ、風力係数を 1 とした目安であり、機器の選定に使う値ではありません。

ケース風速速度圧水平方向の風荷重
台風の下限付近18 m/s約 190 N/m²約 0.3 kN(約 30 kg相当)
暴風域25 m/s約 380 N/m²約 0.6 kN(約 60 kg相当)
風速が倍(圧力は四倍)36 m/s約 780 N/m²約 1.2 kN(約 130 kg相当)
強い台風40 m/s約 960 N/m²約 1.5 kN(約 160 kg相当)

注: 風力係数 1。地上高による割り増しは含めていません。1 kN はおよそ 100 kg相当の力です。台風の下限は気象庁の定義(最大風速およそ 17 m/s 以上)、暴風域は平均風速 25 m/s 以上、強い台風は最大風速 33 m/s 以上 44 m/s 未満です。

例えば、この屋外盤なら、強い台風(40 m/s)で水平方向に約 1.5 kN(約 160 kg相当)の力がかかります。ただし、高さや突風、風力係数が違うと、同じ風速でも値は変わります。

下の図は、風速が上がると盤の面を押す圧力と水平力が増える様子です。いまの風速、速度圧、水平力(kN と kg相当)が数値で変わります。また、いまの風速が、気象庁の台風の強さと、ハリケーン階級(SSHWS)のどこに当たるかも示します。気象庁は 10 分平均、ハリケーン階級は 1 分平均のため、同じ風速でも階級は一致しません。外装の許容値は装置ごとに違うので、表や図の数値を許容値の代わりにはできません。

屋外盤の風速・速度圧・水平力を、盤の正面を基準に示した図です。風速が上がると圧力は二乗で増え、水平力は kN と kg相当で変わります。画像では風が盤面まで届き、強い台風とカテゴリー1の表示が出ている途中です。
風速が上がると速度圧は二乗で増え、水平力(kN と kg相当)も増える。いまの風速が台風・ハリケーンのどの階級かも変わる。

積雪深と積雪荷重

積雪の深さだけで屋根の荷重を決めてはいけません。雪は雨を吸うことで重さを増しますし、天気の変化によっては溶けて密度が増したところ雪が積もり、見た目を超えた重さとなります。また、採光部や架台は、屋根全体の平均荷重より、局所的な堆積で先に耐力が足りなくなることがあります。なお、積雪は地域差が大きい条件です。

例として、2.0 m × 2.0 m の屋外架台屋根を置きます。面積は 4.0 m² です。積雪の単位荷重は、建築基準法でよく使う値(積雪 1 cm あたり 20 N/m²、すなわち 2 kN/m³)で固定します。積雪荷重は単位面積あたりの鉛直力、屋根全体の荷重はそれに面積をかけた値です。いずれも目安であり、機器の選定に使う値ではありません。

ケース積雪の深さ積雪荷重屋根全体の荷重
積雪 30 cm0.3 m0.6 kN/m²約 2.4 kN(約 240 kg相当)
積雪 60 cm0.6 m1.2 kN/m²約 4.8 kN(約 490 kg相当)
多雪地域でよくある 1 m1.0 m2.0 kN/m²約 8 kN(約 800 kg相当)
同じ 1 m で水を含んだ雪1.0 m4.0 kN/m²約 16 kN(約 1 600 kg相当)

注: 単位荷重は積雪 1 cm あたり 20 N/m²(2 kN/m³)。最後の行だけ、水を含んだ雪の目安で単位荷重を倍にしています。1 kN はおよそ 100 kg相当の力です。

例えば、この 2 m 四方の屋根なら、積雪 1 m で約 8 kN(約 800 kg相当)の下向きの力がかかります。最後の行は、深さが同じでも、水を含む雪では荷重が増えることを示します。

下の図は、深さが増えると柱の荷重が増え、積もったあとに雨が降ると、深さは同じでも密度が上がって柱の力がさらに増える様子です。なお、部材断面の選定は扱いません。

屋根架台の積雪と柱の下向き力を、屋根断面を基準に示した図です。積もったあと雨が降ると、厚さは同じでも密度が上がり柱の荷重が増えます。画像では雪の上に雨が降り、柱に下向きの矢印が地面の梁まで届いています。
雪が積もったあと雨が降ると、深さは同じでも、柱の荷重が増える。

まとめ

電圧では、交流入力と制御用 24 V のように見る場所を分け、それぞれの偏差と、電圧を維持できる時間を確認します。受電方式は、地域で階級の名前が違っても、電圧が下がる場所と停電の範囲を変えます。地震では加速度がアンカー荷重になり、風では風速が面圧になり、雪では深さが荷重になります。設計で使うのは、この換算のあとの値です。板厚やアンカー径の推奨値や、過去の発生地点だけで判定することは、ここでは扱いません。

よくある質問

Q1. 定格の ±10% なら PLC は耐えますか。

A. 交流入力の銘板範囲と、24 V を維持できる時間は別です。ですから、広範囲入力の電源なら、交流は残っていても、出力側が先に落ちることがあります。また、電磁接触器は、そのさらに手前で切れることがあります。

Q2. 受電の階級を上げれば瞬低は消えますか。

A. 系統側の電流は小さくなりますが、二次側の始動と溶接は残ります。一方、利用電圧で受けると、同じパルスが系統まで届きやすくなります。

Q3. 震度と加速度は同じですか。

A. 違います。震度は、その地点の揺れの階級であり、力そのものではありません。アンカーに働くのは、加速度に質量をかけた力です。また、同じ階級でも、加速度には幅があります。

Q4. 風速が倍だと、風圧はどうなりますか。

A. 面の圧力はおよそ四倍になります。圧力が風速の二乗に比例するためです。台風の節の表では、18 m/s と 36 m/s がこの関係です。例えば、幅 0.8 m、高さ 2.0 m の屋外盤なら、18 m/s で約 30 kg相当、36 m/s で約 130 kg相当です。

Q5. 積雪深が分かれば荷重は決まりますか。

A. 深さだけでは決まりません。単位荷重をかけて下向きの力になります。例えば、この 2 m 四方の屋根なら、積雪 1 m で約 800 kg相当です。同じ 1 m でも、水を含んだ雪なら約 1 600 kg相当になります。また、局所的な堆積は、平均荷重より先に部材の耐力を超えることがあります。

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