コイルの逆起電力を動く回路図で理解|ダイオードの役割

シリーズ「制御回路の保護とトラブルを動く回路図で理解」第1回

制御回路の定番トラブルのひとつに、「リレーや電磁弁を PLC のトランジスタ出力で切った瞬間、出力素子が壊れた」というものがあります。 犯人は負荷のコイルが OFF の瞬間に生み出す逆起電力(サージ電圧)で、対策の定番はコイルと並列に入れる保護ダイオードです。 ── まぁ、ここまでは多くの資料に書いてありますね。ところが「なぜその向きに付けるのか」「ダイオードを入れると何が犠牲になるのか」 「向きを間違えると何が起きるのか」となると、静止画の回路図と矢印だけでは、なかなか腑に落ちません。

この記事では、コイルを切った瞬間というたった数ミリ秒の出来事を、動く回路図電圧・電流のリアルタイムグラフで観察します。 保護なし・フライホイールダイオード・ダイオード+ツェナー・TVS・RC スナバ、そして危険な「ダイオード逆接続」まで、 同じ回路・同じ操作で見比べられるので、方式ごとの差が目に見えます。 すべての図は操作できます。ボタンで出力を ON/OFF し、切った瞬間のグラフの跳ねを自分の目で確かめながら読み進めてください。

💡 Tip

文章より先に図を触りたい場合は、「フライホイールダイオード ── 還流経路がサージを消す」へ進んでください。保護の入切をボタンひとつで見比べられる、この記事いちばんの見所です。

この記事で分かること

よくある疑問と、答えているセクションの対応表です。

疑問 セクション
逆起電力とは何か? なぜコイルを切ると高電圧が出るのか? §1
保護なしで切ると実際に何が起きるのか? §2(動く図)
保護ダイオードはなぜ効くのか? 向きの意味は? §3(動く図)
ダイオードを入れるとリレーの切れが遅くなるのは本当か? §4(動く図)
ダイオードの向きを間違えるとどうなるのか? §5(動く図)
ダイオード以外の保護部品(TVS・RC)は何が違うのか? §6§7(動く図)
結局どの方式を選べばよいのか? §8(比較表)/ FAQ

1. コイルの電流は急には止まれない ── 逆起電力の正体

リレーのコイル、電磁弁のソレノイド、電磁接触器(コンタクタ)のコイル。制御盤の中の「動かす部品」の多くは電磁石、つまりコイルです。 そしてコイルには、抵抗やランプにはない性質がひとつあります。流れている電流を急に変えられたくない、という性質です(自己誘導)。

通電中のコイルは、電流がつくる磁界のかたちでエネルギーを蓄えています。 ここでスイッチを開くと、回路の側は「電流を今すぐゼロにしろ」と要求しますが、蓄えたエネルギーは瞬時には消えません。 そこでコイルは、電流を流し続けようとする向きに、自分で電圧を発生させます。これが逆起電力です。 発生する電圧の大きさは「電流をどれだけ急に変えようとしたか」に比例するため、 スイッチで瞬時に切るような場面では、24V の回路でも数百 V 級の電圧が現れることがあります。 水道の蛇口を勢いよく閉めたときに配管がガンと鳴るウォーターハンマーと同じ構図で、 流れの勢い(エネルギー)の行き場が、圧力(電圧)の急上昇に化けるわけです。

この電圧はどこに掛かるでしょうか。コイルへの電流を断ち切った張本人、つまりスイッチをしている素子にです。 PLC のトランジスタ出力なら出力トランジスタに、リレー接点なら開きかけた接点の隙間に掛かり、 素子の破壊・接点のアークによる消耗・周辺へのノイズといった実害を生みます。 「電磁弁を切った瞬間に出力が壊れた」の正体はこれです。

以降の図は、すべて同じ骨格の回路を使います。縦の境界線の左が外部(コイル負荷と保護部品)、右が PLC 側のトランジスタ出力(シンク・NPN)です。 24V 電源 → 直列抵抗 1kΩ → コイル → 確認ランプ → 出力トランジスタ → 0V という経路で、 パネルの「ソフトY0」ボタンがプログラムの出力指令にあたります。図が変わるのは、コイルと並列に置く保護部品だけです。

今回の図には、これまでの記事にない装備が2つ付いています。 ひとつは図の上のリアルタイムグラフで、回路図中の【V1】(出力トランジスタのコレクタ C1 の電圧)と【I1】(コイルの電流)を、直近の約 0.05 秒ぶんだけ流しながら表示します。 サージは一瞬の現象なので、グラフの「跳ね」として残るこの表示が観察の主役です。 もうひとつはパネル右上の「回路を初期状態へ」ボタンで、図をやり直したいときに押せば読み込み直後の状態に戻ります。

V1 出力トランジスタ C1(コレクタ)の電圧 ── サージの跳ねを見る I1 コイルの電流 ── 減衰の速さ(=復帰の速さ)を見る

💡 Tip

コイルに直列の 1kΩ は、24V の小形リレーコイルの電流(20mA 前後)に合わせた教材値です。また、シミュレーションは図が画面内にあるときだけ動くので、グラフが止まって見えるときは図までスクロールして戻ってください。

2. 保護なしで切ると何が起きるか ── まず基準線(図1)

最初の図は、あえて保護部品を何も付けていない回路です。以降のすべての保護方式は、この図で起きる失敗との対比で読みます。 「ソフトY0」を ON にしてコイルに電流が流れるのを確認したら、少し待ってから OFF にして、 切った直後の【V1】グラフと C1 の数値に注目してください。

シミュレータ読込中…

出力

C1 = —

V1 C1 [V]

I1 コイル [A]

作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit

OFF にした瞬間、コイルは「今の電流を維持しよう」としますが、トランジスタが切れたので電流の行き場(還流経路)がありません。 その結果、コイルはスイッチ側の電位を強引に持ち上げ、C1 に電源電圧よりはるかに高い電圧の針が立ちます。 パネルの数値が一瞬「サージ注意」と表示し、【V1】グラフに鋭い跳ねが残るのが見えるはずです。 一方の【I1】を見ると、コイル電流は行き場を失って振動しながら急速に消えていきます。

実機でこれをやると、跳ねた電圧がトランジスタの耐圧を超えた時点で素子が壊れます。 一度で壊れなくても、開閉のたびにダメージが蓄積して数か月後にひとつだけ出力が死ぬ、 あるいは電圧の針が配線を伝ってノイズとなり、近くのセンサや通信を誤動作させる ── いずれも現場で実際に起きる形です。

⚠️ よくある落とし穴

「24V の回路だから 30V 耐圧で十分」という考え方は、誘導負荷では通用しません。保護なしのサージは電源電圧ではなくコイルと切る速さで決まるため、電源電圧の何倍もの電圧が普通に発生します。耐圧を上げて耐えるのではなく、次節のように電流の逃げ道を作るのが正攻法です。

補足: シミュレーションでは OFF 後の電圧が振動しながら収まりますが、これは実機の配線容量・漏れに相当する成分を教材用に入れて、振動が永久に続かないようにしているためです。

3. フライホイールダイオード ── 還流経路がサージを消す(図2)

対策の定番が、コイルと並列にダイオードを 1 本入れる方法です。フライホイールダイオード(還流ダイオード、フリーホイールダイオード)と呼ばれます。 向きが肝心で、通電中は電流が流れない向き(逆バイアス)に付けます。カソード(帯マーク側)を電源の+側に向ける、と覚えてください。 通電中は「いないのと同じ」で、OFF の瞬間にだけ仕事をします。

下の図では、このダイオードの有無をボタンで切り替えられます。まず「還流ダイオード:切」のまま ON → OFF してサージを確認し、 次に「還流ダイオード:入」にして同じ操作をしてみてください。同じ回路・同じ操作で、【V1】の跳ねだけが消えるのが分かります。

シミュレータ読込中…

出力

C1 = —

保護

保護 = なし

V1 C1 [V]

I1 コイル [A]

作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit

仕組みはこうです。OFF の瞬間、コイルは電流を維持する向きに電圧を発生します。この電圧は、並列のダイオードにとってはちょうど順方向です。 つまりコイル電流は、行き場を失う代わりにダイオードを通ってコイル自身の中をぐるぐる回る経路(還流経路)を得ます。 弾み車(フライホイール)が惰性で回り続けるように電流が回り続け、蓄えられたエネルギーはコイルの抵抗分とダイオードで静かに熱に変わります。 C1 から見ると、電圧は電源電圧+ダイオード 1 本ぶん(約 0.7V)までしか上がりません。数百 V の針が、約 0.7V の膨らみに変わるわけです。

保護なし(切) ダイオードあり(入)
OFF 直後の C1【V1】 電源電圧の何倍にも跳ねる ほぼ電源電圧+0.7V に収まる
コイル電流の行き先 行き場なし → サージ・振動 ダイオード経由で還流
電流の消え方【I1】 振動しながら急減 なめらかに、ただし長めに残る

表の最後の行に、この方式の唯一にして重要な副作用が顔を出しています。 ダイオードの還流はエネルギーの消費が穏やかなぶん、電流がゼロになるまでの時間が長いのです。 【I1】グラフを見比べると、保護なしでは一瞬で消えた電流が、ダイオードありでは尾を引いて残るのが分かります。 この「尾」が実務で何を意味するかが、次のセクションの主題です。

4. 切れが遅くなる副作用と、ダイオード+ツェナー(図3)

リレーや電磁弁は、コイルの電流がある値を下回った時点で接点が開き、弁が閉じます。 つまりコイル電流の減衰が遅い=機器の復帰(切れる動作)が遅いということです。 単純なダイオード保護では、還流中のコイル電圧が約 0.7V と低いため電流の減りが遅く、 リレーの復帰時間が保護なしの数倍に延びることがあります。メーカーの技術資料でも「サージ吸収素子を付けると復帰時間が長くなる」と明記されている、よく知られたトレードオフです。 高速に開閉を繰り返す用途や、接点が開くタイミングが制御上重要な用途では、これが無視できません。

対策は、保護をやめることではなく、還流中の電圧(クランプ電圧)を意図的に高くすることです。 下の図では、還流経路にダイオードとツェナーダイオード(33V)を直列に入れています。 OFF 時の C1 は「電源電圧+0.7V+33V」あたりで頭打ちになり、素子の耐圧よりは十分低く抑えつつ、 単純ダイオードより高い電圧でエネルギーを消費するため、電流がゼロに戻るまでが目に見えて速くなります。

シミュレータ読込中…

出力

C1 = —

V1 C1 [V]

I1 コイル [A]

作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit

操作は同じ、ON → しばらく待つ → OFF です。図2の「ダイオード入」と比べて、 【V1】の頭打ちが高い位置にあること、そのぶん【I1】の尾が短いことを見比べてください。 「サージをどこまで許すか」と「どれだけ速く切りたいか」は交換条件で、 ツェナーの電圧は素子の耐圧と復帰時間の要求から選ぶ ── これがこの方式の設計の考え方です。

💡 Tip

市販の電磁弁やリレーソケットには、保護ダイオード(またはダイオード+ツェナー相当)を最初から内蔵した品種があります。内蔵品を使う場合、外付けは不要ですが、コイルに極性が生まれる点にだけ注意してください。+−を逆に配線すると、次節の「逆接続」と同じ事故になります。

5. 向きを間違えると保護ではなく短絡になる(図4)

⚠️ 危険デモ

この図はわざと間違えた回路です。実機で起これば部品が壊れる状態なので、シミュレータ上でも「ソフトY0」は短く押してすぐ OFF にしてください。

フライホイールダイオードの怖いところは、付け忘れよりむしろ逆向きに付けたときです。 逆向きのダイオードは、通電中(Y0 ON 中)にちょうど順方向になります。 つまりコイルを守るはずの部品が、通電した瞬間にコイルをほぼ短絡するバイパスになり、 電源 → 直列抵抗 → ダイオードという経路に大電流が流れます。

シミュレータ読込中…

出力

C1 = —

V1 C1 [V]

I1 コイル [A]

作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit

ON にした瞬間、電流のドットがコイルではなくダイオード側を流れ、コイルはほとんど働きません(リレーなら「動かない」)。 教材回路は直列抵抗が電流を制限していますが、実機の配線ではこの抵抗に相当するものがないため、 ダイオードの焼損・電源の保護動作・出力素子の破壊につながります。 「保護部品を付けたのにリレーが動かない、しかも部品が熱い」という症状が出たら、まずこの逆接続を疑ってください。

向きの確認方法はシンプルです。ダイオードの帯マーク(カソード)が電源の+側。 ダイオード内蔵形の電磁弁・リレーを使う場合は、コイル端子の+−表示と電源の極性を突き合わせる。この 2 点だけで、この事故は防げます。

6. TVS ダイオード ── 決めた電圧で頭打ちにする(図5)

ダイオード+ツェナーと似た発想の既製部品が TVS ダイオード(Transient Voltage Suppressor)です。 普段は絶縁物として振る舞い、端子電圧が決められた値を超えた瞬間だけ導通して、電圧をその付近で頭打ちにします。 サージ吸収専用に設計されているため応答が速く、瞬間的な大電流に耐えるのが持ち味です。 下の図では、単方向 TVS をツェナーダイオード(33V)で近似して、コイルと並列に置いています。

シミュレータ読込中…

出力

C1 = —

V1 C1 [V]

I1 コイル [A]

作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit

ON → OFF の操作で、【V1】のピークが 33V 付近で頭打ちになること、 クランプ電圧が高いぶん図2より【I1】の尾が短い(=復帰が速い)ことを確認してください。 通電中に働かないためには「TVS の動作電圧 > 電源電圧」である必要があり、 ここが電源電圧のすぐ上に設定できるかどうかが選定のポイントになります。 なお実部品の TVS には単方向・双方向の別や電力定格の選定計算があり、それはこのシリーズの続編で扱います。

7. RC スナバ ── ダイオードが使えない場面の入口(図6)

ここまでの保護はすべて「向きのある部品」を使っていました。ということは、電流の向きが交互に入れ替わる AC コイルには、そのままでは使えません。 通電中の半サイクルで必ず順方向になり、図4の短絡と同じことが起きるからです。 AC コイルや、リレー接点そのものの保護でよく使われるのが、抵抗とコンデンサを直列にした RC スナバ(CR スナバ、スパークキラー)です。

シミュレータ読込中…

出力

C1 = —

V1 C1 [V]

I1 コイル [A]

作成: CircuitJS1 (Paul Falstad / Iain Sharp et al., GPL) · falstad.com/circuit

OFF の瞬間、行き場を失いかけたコイル電流は、まずコンデンサに流れ込みます。 コンデンサは「電圧の急変を受け止める」部品なので、C1 の跳ねが鈍り、直列の抵抗が突入電流と振動を抑えます。 図1と比べると、【V1】のピークが穏やかになり、跳ねの角が丸くなるのが分かるはずです。 ダイオードのような「ほぼ完全な頭打ち」ではありませんが、極性がないため AC でも DC でも使えるのが最大の利点です。 図の定数(0.1µF+100Ω)は動きを見るための教材値で、実設計では負荷と電圧に応じて選定します(市販のスパークキラーは定数がセットになっています)。

8. 方式の使い分け ── まず「DC か AC か」と「復帰の速さ」

6 つの図で見た内容を一枚に整理します。完璧な保護部品はなく、サージをどこまで抑えるかどれだけ速く切りたいか、 そしてDC か AC かの 3 点で選ぶ、というのが第 1 記事時点での結論です。

方式 サージ抑制 復帰(切れ)の速さ 主な対象 ひとこと
保護なし(図1) × 素子・接点が壊れる。選択肢にしない
ダイオード(図2) ◎ 最も強い 遅くなりやすい DC コイル 迷ったらまずこれ。向きに注意
ダイオード+ツェナー(図3) 比較的速い DC コイル 復帰時間が効く用途に
TVS(図5) ○ 設計次第 比較的速い DC 回路 既製のクランプ部品。応答が速い
RC スナバ(図6) △ 設計次第 比較的速い AC/DC・接点 極性がなく AC に使える

取り付け位置にも定石があります。保護部品はコイルの端子のできるだけ近くに付けてください。 サージの発生源はコイルなので、発生源のそばで抑えるほど、配線に高電圧が乗る区間が短くなります。 PLC 出力ユニット側にサージ吸収回路が内蔵されている機種もありますが、あれは最後の砦であって、負荷側での対策の代わりにはなりません。

なお、このシリーズの続編では、今回入口だけ見せた話 ── DC モーターを止めたときの電流の行き先(回生)、 AC コイルに単純なダイオードが使えない理由の専用図、リレー接点側の RC・バリスタ ── を、同じ動く回路図の形式で扱う予定です。

まとめ ── サージは「電流の行き場」を用意すれば怖くない

  • コイルの電流は急には止まれない。無理に止めると、電流を維持する向きに高電圧(逆起電力)が発生し、スイッチをしている素子に掛かる(§1・§2)。
  • フライホイールダイオードは、OFF の瞬間だけ電流の逃げ道(還流経路)を作る部品。向きは「カソード=帯マークを電源の+側」(§3)。
  • ただしダイオード保護は電流の減衰が遅く、リレー・電磁弁の復帰が遅れる。復帰時間が効く用途ではダイオード+ツェナーや TVS でクランプ電圧を上げる(§4・§6)。
  • 向きを逆に付けると、保護どころか通電中の短絡になる。「保護を付けたのに動かない・熱い」は逆接続のサイン(§5)。
  • AC コイルには極性のある保護は使えない。RC スナバが AC/DC 共通の入口(§7)。
  • 保護部品はコイル端子の直近に。PLC 側の内蔵保護は最後の砦(§8)。

前提となる PLC のトランジスタ出力(シンク)やコイル駆動の接続は、 「電気設計のPNPとNPNを動く回路図で理解する」「PLCのリレー・トランジスタ・トライアック出力はどう違う?」で、 同じ形式の動く図を使って解説しています。あわせてどうぞ。

FAQ

Q1. 逆起電力とは、一言でいうと何ですか?

A. コイルが「流れている電流を維持しようとして自分で発生させる電圧」です。電流を急に断ち切るほど大きくなり、24V 回路でも数百 V 級になることがあります。サージ電圧・誘導性キックバックとも呼ばれます。

Q2. 保護ダイオードはどこに付けるのが正解ですか?

A. コイル(リレー・電磁弁など)の端子のできるだけ近くに、コイルと並列に付けます。サージの発生源であるコイルのそばで抑えるほど、高電圧が乗る配線区間が短くなります。PLC 側の端子台に付けるより、負荷側に付けるのが定石です。

Q3. ダイオードの向きはどう覚えればよいですか?

A. 「帯マーク(カソード)を電源の+側」です。正しい向きなら通電中は電流が流れず(逆バイアス)、OFF の瞬間だけコイル電流を還流させます。取り付け後にコイルへ通電して、ダイオードが発熱しないことを確認すると確実です。

Q4. ダイオードを付けるとリレーの切れが遅くなると聞きました。本当ですか?

A. 本当です。還流中のコイル電圧が約 0.7V と低いため電流の減衰が遅く、復帰時間が保護なしの数倍になることがあります。復帰の速さが必要な場合は、ダイオード+ツェナーや TVS でクランプ電圧を上げる方式にします(§4・§6)。

Q5. 保護ダイオードの品種はどう選べばよいですか?

A. 目安として、逆方向の耐圧が電源電圧の 2 倍以上、順方向の許容電流がコイル電流以上の整流用ダイオードを選びます。24V のリレーコイルなら、定番の汎用整流ダイオード(1A・数百 V 耐圧クラス)で足りる場面がほとんどです。最終確認は負荷とダイオードのデータシートで行ってください。

Q6. AC のコイル(AC 電磁弁・AC コンタクタ)にもダイオードを付けてよいですか?

A. いけません。AC は電流の向きが交互に入れ替わるため、極性のあるダイオードは必ずどちらかの半サイクルで短絡になります(§5 の逆接続と同じ状態)。AC コイルには RC スナバやバリスタなど極性のない保護を使います。理由の専用図は続編で扱う予定です。

Q7. PLC の出力ユニットに保護回路が内蔵されていれば、外付けは不要ですか?

A. 内蔵保護は「最後の砦」と考えてください。ユニット内蔵のサージ吸収回路は素子の即死をある程度防ぎますが、配線に乗るサージやノイズ、接点側の消耗までは面倒を見てくれません。誘導負荷には負荷側での保護を基本にするのが安全です。

Q8. リレーの接点で別のコイルを切る場合も、同じ対策でよいですか?

A. 考え方は同じで、切られる側のコイルに保護を付けます。DC ならダイオード系、AC なら RC・バリスタです。保護がないと、接点の隙間でアーク(火花)が発生して接点が消耗し、リレーの寿命が桁で縮みます。接点そのものと並列に RC を入れる方法もあり、これも続編で扱います。

Q9. ダイオード内蔵形の電磁弁・リレーを使うときの注意はありますか?

A. コイルに極性が生まれることです。内蔵ダイオードの向きは配線の+−が正しい前提で決まっているので、逆に配線すると通電した瞬間に内蔵ダイオードが短絡経路になります(§5)。端子の+−表示と電源極性の確認だけは省略しないでください。

Q10. この図のシミュレーションは実機とどこが違いますか?

A. 図は原理の骨格を見せるために簡略化しています。コイルは 50mH+直列 1kΩ の教材値で、実機の配線インダクタンス・浮遊容量・部品の温度特性・接点のアークなどは省いています(保護なしの図では、振動が永久に続かないよう配線容量・漏れ相当の成分だけ入れています)。原理の理解には図を、実設計の数値にはメーカーのデータシートを使ってください。

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