工場を歩くと、今やネットワークにつながっていない設備の方が少ないです。割り振られた IP アドレスの管理は、通常の業務になりつつあります。ただ、末尾の /24 などの話になると急に自信をなくす人も少なくないのではないでしょうか。しかも「カメラを増やすから /25 に切れ」といった指示がいきなり飛ぶと混乱する人も少なくありません。
この記事では、IP アドレスのスラッシュを設備 LAN の切れ目として読む仕組みを解説します。この仕組みを CIDR と呼び、切れ目の位置で、その網が持てるホストの番地の数が決まるのです。同じ網に何を載せるか、切ったあとにスイッチだけで届くかなど、ネットワークの基本的な作業になりつつある技術を学びましょう。設備 LAN のスイッチとルータの続きです。
この記事の要点一覧
| 見たいこと | 要点 |
|---|---|
/24 の意味 | 32 ビットのうち先頭 24 が網の側。番地は 256 個。ケーブルの本数ではない |
/24 を /25 にすると | 持てるホストが半分。256 → 128 → 64 |
| マスクと CIDR | 255.255.255.0 と /24 は同じ切れ目の二つの書き方 |
| 同じ網にカメラ | 同じ /24 なら放送が PLC にも届く |
| 切ったあとの届き方 | 別の切れ目はスイッチだけでは届かない。境にルータが要る |
| 台数から逆算 | 必要な番地から切れ目の長さを決める。長さを変えて切る話はツールへ |
| より長い切れ目が勝つ | 重なる経路では、一致が長い行が残る |
| 現場で確認する | 銘板の IP とマスク、いまの IP、計算タブ |
/24 は 256 個の番地であり、ケーブルの本数ではない
IPv4 のアドレスは、いまの設備で広く使われている 32 ビットの番地です。CIDR の /24 は、その 32 ビットのうち先頭 24 を網の側(ネットワーク部)、残り 8 を機器の側(ホスト部)とする切れ目を表します。ホスト部が 8 ビットあれば、番地は 28 = 256 個。192.168.10.0/24 なら、192.168.10.0 から 192.168.10.255 までが同じ網です。
現場で取り違えやすいのは、この 256 を「ポート数」や「ケーブルの本数」と読んでしまうことです。スイッチが 8 ポートでも、実際につながっている機器が 3 台でも、アドレス表が /24 ならその網の番地は 256 個のままです。逆に、スイッチを増設してもポートが増えるだけで、番地は 1 個も増えません。箱の口の数と、IP が切っている範囲は別物です。
スラッシュのあとの数字が大きいほど網の側が長く、機器に使える番地は少なくなります。/16 は広い。/30 は向かい合う 2 台向け。そう覚えておくと、表を見た瞬間に「この網は何台までか」が先に出てきます。
/24 を /25 にすると、ホストが半分になる
スラッシュの数字を 1 増やすと、網の側が 1 ビット伸び、機器の側が 1 ビット減ります。この数字はプレフィックス長とも呼ばれます。番地の数は、そのたびに半分です。/24 は 256、/25 は 128、/26 は 64。下の図は、境界が右へ 1 マス動くたびに、持てるホストが半分になっていく様子です。
図では境界が /25 にあり、番地は 128 個です。なお 256 のうち先頭と末尾は、網そのものの番地と、全員向けの番地(ブロードキャスト)に予約されるのが普通で、使えるホストを 254 対 126 と数える現場もあります。ただし「/24 を /25 にすると何が半分か」の答えは、その予約の前後ではなく、256 が 128 になるという塊の大きさです。ケーブルもルータの台数も、半分にはなりません。
冒頭の「/25 に切れ」という指示は、192.168.10.0/24 を 192.168.10.0/25(.0〜.127)と 192.168.10.128/25(.128〜.255)の二つに分けることを指します。自分の表でビットを動かして確かめたいときは、CIDR ツールの可視化タブが、この図と同じ切れ目を色で示します。
255.255.255.0 と /24 は、同じ切れ目の二つの書き方である
現場の画面では、スラッシュではなく 255.255.255.0 のような書き方を見かけることが多いはずです。これをサブネットマスクと呼びます。先頭 24 ビットが 1、残りが 0 という意味で、CIDR の /24 と同じ切れ目です。別物ではなく、同じ切れ目に書き方が二つあるだけです。/25 なら、マスクは 255.255.255.128 になります。
銘板や PLC の設定画面はマスク表記、設計書やクラウド側は CIDR 表記が多い、という傾向はありますが、どちらで出てきても見ている切れ目は同じです。社内ネットワークが遅くなる理由で出てきた /24 も、この切れ目の話でした。
マスクは /24 のまま、アドレスだけ隣の網の番号に変えてしまうことです。他の網へ出す出口(ゲートウェイ)も古い網のままだと、ランプは点いても IP では届きません。数字を触るときは、アドレス・マスク・出口をセットで見ます。
同じ /24 にカメラを足すと、放送が PLC に届く
冒頭のカメラを PLC と同じ /24 に足すと、何が起きるでしょうか。同じ /24 に載せるということは、宛先を決めない合図が全員に届く範囲(放送ドメイン)に載せることとほぼ同じです。カメラが相手を探す合図(ARP)を投げ、映像の塊を流しはじめると、それは同じ網にいる PLC や操作画面、盤から離れた入出力にも届きます。スイッチは IP を見ないので、「制御用だから通さない」という気の利かせ方はしてくれません。
それでも一時は動きます。問題は、PC やカメラを足した週あたりから「たまに遅れる」が始まることです。原因の型は社内ネットワークが遅くなる話と同じで、放送の届く範囲が広すぎることにあります。周期通信を守るなら、カメラは別の切れ目へ出し、境で止めます。
サブネットを分けると、スイッチだけでは届かなくなる
では、指示どおり /24 を二つの /25 に切ったあとはどうなるでしょう。PLC が 192.168.10.10、工程 PC が 192.168.10.200 だと、アドレスの見た目は隣同士です。しかしマスクが /25 なら、ケーブルが同じスイッチに刺さっていても別の網です。スイッチは同じ切れ目の中だけを渡す箱なので、この境を越えることはありません。
境の向こうへ届けるには、境で IP を見てデータのひとまとまりを組み直す箱が要ります。ルータ、または経路の機能が付いたスイッチ(L3 スイッチ)です。ここがスイッチとルータの切れ目そのものです。切る仕事と、切ったあとに渡す仕事は別物です。さらに、境の先へ通してよいかどうかを見るのがファイアウォールの役目です。
必要な台数から逆算して切る
切る長さはどう決めればよいでしょうか。先に /24 を置いて余りを捨てるより、必要な番地の数からスラッシュの数字を決めた方が、あとが楽です。ホスト 60 台なら /26(64 番地)で足りることが多く、隣の工程まで /24 を丸ごと渡す必要はありません。数えるのは今日の台数だけではなく、来期の増設や保守で持ち込む PC の分までです。そのうえで、予約の 2 番地を見込んで余裕を 1 段階上にするかどうかは、現場の判断になります。
工程ごとに台数が違うときは、全部を同じ長さで切らず、必要な量に合わせて長さを変えます。この切り方には VLSM という名前が付いていますが、名前より「台数から長さを出す」という順番の方が大事です。手順の本体はこの記事では扱いません。CIDR ツールの分割 / VLSM タブに、親の網と各工程の台数を渡してください。
経路は、より長いプレフィックスが勝つ
切った網がいくつもできると、今度はルータが、宛先をどの切れ目に入れるかを選ぶことになります。経路の表に 10.0.0.0/8、10.10.0.0/16、10.10.20.0/24 が並んでいるとき、宛先 10.10.20.45 は三つとも候補です。勝つのは、一致しているビットが一番長い行。これを最長一致と呼びます。短いプレフィックスほど広い網、長いほどより具体的な網です。下の図は、その選ばれ方です。
図では宛先が /24 の行に乗り、/8 と /16 は候補から外れています。設備でも、より長い切れ目が残ります。逃げ道(0.0.0.0/0)は一番短い切れ目なので、工程の /24 があればそちらが勝つ、という同じ決め方です。許可のリストやクラウドの経路表でも理屈は同じです。自分のリストでどの行に当たるかを見るなら、CIDR ツールの比較するタブが使えます。
現場で確認する
ここまでの切れ目を、自分の機器で確かめてみましょう。機器の銘板または設定画面で、IP とマスク(または CIDR)、それに他の網へ出す出口の三つを揃えて読みます。同じ網かどうかを決めるのは、アドレスの見た目の近さではなく、切れ目が同じかどうかです。.10 と .200 でも、/24 なら同じ網、/25 なら別の網です。
ノート PC がいまどのアドレスを持っているかは、IP アドレス確認で見られます。設計書の CIDR の再計算や、マスクとスラッシュの相互変換は、CIDR ツールの計算タブでできます。可視化タブはビットの切れ目、分割 / VLSM タブは台数からの切り出し、比較するタブは経路の当たり、という分担です。
まとめ
/24 を /25 にすると半分になるのは、ホストの番地の数です。ケーブルもスイッチのポートも半分にはなりません。同じ切れ目をマスクで書けば 255.255.255.0 と 255.255.255.128 です。同じ網にカメラを足せば放送が混ざり、切ったあとはスイッチだけでは隣の網に届きません。
ビットの切れ目、台数からの切り出し、経路の当たりは、CIDR の可視化で自分の表を使ってやり直せます。箱の側の仕事(同じ網の中を渡すか、境で組み直すか)は設備 LAN の記事に、規格そのものの話は産業用通信の記事にあります。
よくある質問
Q1. /24 を /25 にすると何が半分になるのか
A. ホストの番地の数です。256 が 128 になります。ケーブルの本数やスイッチの台数ではありません。使えるホストを 254 対 126 と数えるのは、網そのものの番地と全員向けの番地を除いたあとの数え方です。
Q2. サブネットマスクと CIDR は別物か
A. 切れ目は同じです。マスクはビットを 255 の並びで書き、CIDR は先頭何ビットかを /24 と書きます。255.255.255.0 は /24、255.255.255.128 は /25 です。
Q3. PLC と操作画面は同じ /24 に置いてよいか
A. 同じ周期で話し合う相手同士なら、同じ網に置くことが多いです。ただし、カメラや事務 PC まで同じ /24 に足すと、放送が制御側に入ってきます。周期を守る相手だけを同じ切れ目に残します。
Q4. /24 を二つに分けるとルータは要るか
A. 分かれた網同士を IP でつなぐなら要ります。スイッチは同じ切れ目の中だけを渡す箱で、境は越えません。経路の機能が付いたスイッチ(L3 スイッチ)を使う場合も、境を渡す部分は同じ仕事です。
Q5. 最長一致とは何か
A. 宛先が複数の経路に当てはまるとき、一致しているビットが一番長い行を採用する、という決め方です。10.10.20.45 に対して /8 と /16 と /24 があれば、/24 が残ります。
Q6. IPv6 でも同じ考えか
A. 切れ目の読み方は同じで、違うのは数字の慣例です。拠点のひとまとまりは /48、一つの網は /64 が多い、といった具合です。この記事の本編は IPv4 の設備 LAN の話です。IPv6 の計算は CIDR ツール側でできます。
Q7. この記事の図と CIDR ツールの違いは何か
A. 図が動かすのは、/24 → /25 で番地が半分になることと、より長いプレフィックスが勝つことの二点だけです。自分のアドレス表の計算、台数からの切り出し、経路リストの照合は、ツールの計算・可視化・分割 / VLSM・比較するタブで行います。

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